いつの間にか日は沈み
長いようで短かった部活がようやく終わった
一刻も早くこの場から抜け出して、家へ帰りたい
なんだっけ、天童先輩か
笑顔で手を振ってくる先輩に軽く頭を下げて
若利より先に家路へと歩き始める
遅れて若利も歩き始める
その間、若利はずっと無言で私の横を歩く
夜とはいえそれでもなお若利の隣は目立つ
**
家が目前としている所で、無言だった若利が口を開く
イラついてなんか無いと言ったが、
自分でもイラついてるなと分かってる
それでも早く1人になりたくて、あしらう様に
会話を終わらせる
そこから会話は途絶え、お互い何も喋らずに玄関に着き
「ただいま」とだけ発して靴を脱ぎ、
部屋へと向かう
ドンッッッ…
自分の部屋に着いたとたん先程の静けさは嘘のように
乱暴に荷物を床に投げ捨て、舌打ちをする
その辺に落ちていたバッグ等を蹴り飛ばして
机に置いてあったノートや教科書を、ただなんの意味もなく虚無へと投げる
「言わなくても分かるでしょ?」だってさ
分かってたら聞いてねーわボケェ!!
先輩のあの態度も
私が何も出来ないことも
全部ムカつく
どうしようもない怒りが私の体をじわじわと侵食していく
分かってる。自分が悪いことくらい
私はいつだって誰かがそばに居てくれないと動けない
誰かが答えてくれないと分からない
自分で考えて、その後は?
失敗したら?
それが心底怖い
分かってる。
失敗しない人間なんていないって事くらい知ってる
失敗を恐れてちゃ何も出来ないことも
口で言うのは簡単
でもとても難しい
普通の人ならすぐに立ち直れるかもしれない
でも私はそうじゃないから
行動する勇気も
自分は大丈夫だという自信も
私には無いから
バカで約立たずで能無しで無能で無価値で
なんだって成し遂げ切れなくて
兄と同じ色の髪をくしゃくしゃにして
涙で顔をぐしゃぐしゃにする
私が、『牛島』だと 分からない よう に。
これ以上、私を 惨めに しない ように。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。