バンと銃声のような音が聞こえた数秒後。
男は唸り声を上げてその場に倒れると足をばたつかせてのた打ち回った。
状況が理解できない私の視界に入ったのは、倒れた男の前に佇むユンギの姿で。
よく目を澄ませると、片手には銃が握りしめられていた。
そして、その銃をもう一度男に向け何度も何度も発砲する。
苦しむ男の声があまりにも痛々しくて叫ぶけれど、ユンギは手を止めようとはしない。
結局、動かなくなるまで発砲を続けた。
震える手で携帯を渡すとユンギは速攻で電話を掛けた。
今さっき人を殺したっていうのに流暢に話を進めるその姿を見る限り、ユンギには情なんてもの存在しないんだと思う。
眉間に皺を寄せながらこちらに近づいてくるユンギに体が勝手に反応する。
まさかユンギが謝るなんて思ってもみなかった。
謝ることに慣れていないらしく、恥じらいを隠すように後頭部を掻くその姿は本物なのかそれとも偽りなのか…私にはまだ分からない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!