第27話

27
797
2022/12/16 15:00
1時間目が終わった。


正直、私は授業に集中出来なかった。


少し広めのその背中を見てるだけで十分だった。


カッターシャツの中の背中は筋肉すごいんだよな、とか


結構染めてたはずなのに髪の毛サラサラだな、とか


関係ないことばっかり考えて時間が過ぎた。
マユカ
マユカ
あかん、全ッ然分からん
長く学校を休んでたマユカは、授業について行くのが大変みたい。
マユカ
マユカ
あなたさ、放課後ちょっと残られへん?
マユカ
マユカ
数学だけでええから教えて欲しい
あなた

あ、え、いいけど

それってさ、それって、2人っきり.............


放課後が一気に楽しみになった。










とは言っても、その時間が近づくにつれて怖くなってくるもので。


昼からの時間も全く集中できずに


放課後を迎えてしまった。
2人きりの教室。吹奏楽部の演奏がかすかに聞こえてくる教室。


マユカはこの間のリクみたいに

後ろを向いて、私の机を挟むように私と向かい合っている。


その至近距離で見る顔が、あの時を思い出すようで


どうしていいか分からなくって。
マユカ
マユカ
ここ教えて欲しいねんけど......
マユカ
マユカ
あなた??
あなた

あっ、うん。ここは......

マユカは私の解説を真面目に聞いてる。


私の脳はほとんど働いてない。何も考えられない。


少し考えるために顔を上げたら、マユカの整った顔が至近距離にあって。

近っ...............
あなた

はい。だからここは10になるってこと。

あなた

分かった?

半ば強制的に終わらせたら、マユカも適当に頷いた。
あなた

絶対分かってないじゃん。

マユカ
マユカ
あなたも教える気ないやろ。笑
バレた。


マユカに勉強教えるとか、どうやったら集中できるわけ??


マユカは頬杖をついて私をジロっと睨んだ。
マユカ
マユカ
なに?緊張してんの?
そりゃするでしょ。

マユカは私なんかと話しても緊張しないだろうけど。
マユカ
マユカ
へー、可愛い
だから!!そういうとこ!!勘違いしちゃうから!!
あなた

どの口が言ってるんよ。

マユカ
マユカ
この口やけど。笑
マユカはそう言ってケラケラと笑った。


私が緊張してるこの気持ちをもてあそばれてる。そんなとこまでマユカらしい。
あなた

ねぇ、マユカさ

マユカ
マユカ
ん?
誤魔化して言う『やっぱりなんでもない』が喉まで出かかってたけど


あんなにリマちゃんに相談したし、悩みも晴れないし


その言葉を飲み込んで、心のままに言葉を発する。
あなた

なんでキスしたの.......

その途端に目を逸らしたマユカ。


逃亡の予感.......!私はマユカの手をとっさに掴んだ。

逃げられないことを悟ったマユカは、今まで見た事ないくらい顔を赤くして

なにか呟いた。
マユカ
マユカ
...........したかったから
え!?したかった!?したかったって何!?


脳内が『したかった』でゲシュタルト崩壊してる。
あなた

私、あれ、初めてだったんだけど

逃げ腰のマユカに追い打ちをかけて行くと、マユカはへらへらと笑いながら顔を背ける。
マユカ
マユカ
ごめん
マユカ
マユカ
いややった?
あなた

いやじゃないけど

マユカ
マユカ
なら......許してや
マユカ
マユカ
あのままじゃ生きてける自信なかったから
そっか......と頷きかけて、慌てて訂正。

なんか意味深なこと言ってるけど、結局私を惚れさせた理由になってないよね?
あなた

いや、急にされたらびっくりじゃん。

マユカ
マユカ
私もさ
マユカ
マユカ
感情のまま動いちゃったからさ
マユカ
マユカ
正直、なんも考えてなくって
恥ずかしがって笑うマユカの火照ったほっぺを見てたら

それがごまかしを含んでることも見てとれた。

私は2週間で心の整理をつけたけど

マユカはまだ引きずってるみたい。


私だって、リマちゃんから話聞かなきゃずっと引きずってたと思う。
マユカ
マユカ
 ......わしも初めてやったし。
そう呟いて、私と目を合わせてきた。

目が合ってまた照れたように笑うマユカ。


わしも......初めて.........!?


やっぱりリマちゃんの言ってたことは合ってたんだ。


でも、昔あんなに彼氏とのスキンシップを拒んでたマユカが


なんで私なんかと。理解不能すぎる。


思考が混乱した中でマユカは、恐る恐るといった感じで
私に向かって呟いた。
マユカ
マユカ
だからさ、やり直させてくれへん?
は、はい.........!?!?それって。


そんなこと言われるなんて聞いてない。
全く聞いてない。


なぜこんな私と2回もしようとしてるのか、その理由が分からない。付き合ってもないのに。


こんどはノリと勢いじゃないんだよ......?


私は黙った。黙り続けようと思ったけど、無理だった。


マユカが私の頬に、優しく手を当ててきたから。
あなた

な、何して......

あなた

待って、待って待って待って

顔を引き寄せられそうになって、慌てて止める。
あなた

なんで......???

マユカは答えてくれなかった。


その代わりに、その端正で綺麗な顔がいやというほど近づいて。


私たちの間には机があるというのに


その机越しに、再び唇が触れてしまった。


取り返しのつかない行動。肌で感じるその緊張。


付き合ってもないただの友達に心を奪われて


閉め切られた教室の中で、こうして唇を交わすなんて
ただ事じゃないって思う。

生々しいその感触が私の心をとろけさせていく。


過去のマユカを思い出させるような肉食っぷりが格好よくて


深い所まで迫ってくるマユカを必死で受け止める。


その愛おしい人が何度も私に絡みついてくるのを感じては、それに夢中になってしまう。
あなた

っはぁ.........っ

マユカ
マユカ
っあなた...........
離れたと思ったら、マユカはいつもと違う目で


思わず鳥肌が立つような美しい表情をしてて


私に向かって、そっけなく言い捨てた。


















マユカ
マユカ
.............好き

プリ小説オーディオドラマ