マコちゃんと別れて教室に入ったら
前の席の人がちゃんと学校に来てるのが見えた。
当然ハイテンション娘に絡まれてるけど。
リクは前のことを引きずってる様子はない。
いや、見せないようにしてるだけか......とは思ったけど
それは私が触れることじゃない。
リクをおちょくるマユカが久しぶりで
2週間休んだだけでも懐かしい気持ちになってる。
あと.........ちょっと気になるのが、リクの後ろにずっと女の子がいること。
いやだれ?その女だれ?
なんて浮気された彼女みたいな台詞が頭に浮かんだけど
その瞬間に目が合ってしまった。
それに気づいたリクはその子をニヤッと睨んだ。
ミイヒちゃん??.......クラスメイトかな。
クラスメイトの名前を全然覚えてないのを今さら後悔。
うちらがいない時に仲良くなったのかも。
可愛い声で放たれる関西弁、まつ毛が長くてくりくりの目、笑ってハート型になってる口。
暗めの茶髪で、きちんと整った前髪が天使みたいで
「可愛い」って言葉が一番似合うような子。
陽キャ確定。無理だ。
ミイヒちゃん?はいきなりデカい声で私の名前を呼んだ。
しかも呼び捨て。怖っ。
ミイヒちゃんは私の顔をじーっと覗き込んで
あまりの可愛さとオーラに圧倒される。
やばい、全く覚えてない。
というか幼少期の記憶を自分で消しつつあるから
思い出せなくなってる。
んでもここは適当に返事しとかなきゃ.......
勘が良すぎるマユカを軽く叩く。
私ってそんなに嘘下手?
こっちは純粋に返事してくれるし大丈夫だ。
ってか隣の家、生まれてこの方同じ家だと思ってた。
あー.........ごめんなさい。
名前言われるまで全く知らなかった。
まぁでも、ミイヒちゃんのおかげでリクはあんまり怒ってないみたいだし
ある意味救われたかな......
ん??なんか話がおかしな方向に行ってるような。
何言われるか怖いんだけど。
しかもこっち覚えてないし......話振られたらどうしよう。
安定のコミュ障で黙り続けてるけど、考えとかなきゃ。
そんな時代もあったもんだ.................
親の趣味でツインテールさせられてたっけ。
自分はツインテールなんて子供っぽいから嫌、なんて思ってたけど。
中学時代はバッサリ切ってショートで
高校になって伸びたからボブになっただけだけど。
.........というか、さっきから目の前でモジモジして気まずそうにしてる猫が気になる。
ミイヒちゃんとマユカ、どことなーく似てるような......
マユカはあえて喋ってないのか、人見知りしてるのかが分からなくて
でも目だけは「眠い」って訴えかけてる。はいはい。
担任の先生が教室に入ってきて
席の遠いリクは私たちに別れを告げた。
ミイヒちゃんもリクの後に続いて行って
私は優等生モードに切り替えた、はずだった
どう思う?ってどういうこと????
しかも知らない間に呼び捨てしてるし。知り合い?
いつもの笑顔でマユカは私を見た。
頼ってくれてるのが分かってちょっと嬉しい.....
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。