第12話

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2020/04/05 11:21
そしてあの更新から2日が経った。

"If story"や"Heavennovel"はおろか、まともにスマホすらいじれていない。

澄香とはまともに口を効かなくなった。当然部活にも行っていない。
後輩には適当なことを言って誤魔化してはいるが…まあそれも限界はあるだろう。

小説が…部活が…正直どうでもよかった。
ただ単純に…今ある日々さえ過ごせれば…
時任先生
時任先生
よし、そろそろか。
じゃあよーい、スタート!!
俺はマラソンの時間、そんなことを考えながら勢いよく走り出す。
俺が抱え込んでいる…言わばモヤモヤを取っ払うべく…。
丸山丈
丸山丈
あっ。
いきなり転んでしまった。幸先が悪い。
こんなんでモヤモヤを取っ払うとかバカみたいだな、俺。
溝口大輝
溝口大輝
何してんだー?
ほら走れ走れー!
丸山丈
丸山丈
あっ、溝口…。
俺は後ろからやってきた溝口と話しながら並走する。
溝口大輝
溝口大輝
聞いたぞ?
お前色々悩んでんだろ?
なんかあるなら俺にでも柴田にでも相談してくれりゃあいいのによぉ…。
丸山丈
丸山丈
誰から聞いたんだよ。
柴田悟
柴田悟
荒木さんだよ。
そういえば最近、君たち話してないよねぇ。
柴田も後ろからやってきて並走する。
丸山丈
丸山丈
お前らが気にすることじゃねえだろ…。
溝口大輝
溝口大輝
いやお前、俺や柴田と理系科目が切り離せるか?
そんなの無理だろ?
柴田悟
柴田悟
それと一緒だよ。
君と荒木さんはペアのようなものじゃないかと思っててさ…。
こいつら、余計なことばかり言うんじゃねぇ。
溝口大輝
溝口大輝
あっ、カップルって言うのかな!?
で、今はリア充だっけ?昔はアベックとも言ってたっけ…。
お前ら、それ死体蹴りって奴な。
柴田悟
柴田悟
あっ…。
噂をすればってこういうことだよね。
丸山丈
丸山丈
…え?
荒木澄香
荒木澄香
どきなさい。
並走なんかするもんじゃないわ。
澄香がそう言って…それだけ言って足の遅い俺たち3人を押しのけて前に進んでしまう。
溝口大輝
溝口大輝
あらー、こりゃケンカでもしたか?
柴田悟
柴田悟
夫婦喧嘩は犬も食わない、君たち文系の好きそうな言葉だね。
丸山丈
丸山丈
お前らさっきから変なことばっか言ってんじゃねぇよ…。
そうやって話しているうちにまた学校へ戻ってきた。
目標タイムギリギリ。運動不足は俺にはどうしようもない話だ。

俺は改めて学校を見上げる。
運の悪いことに、一番最初に目に入って来たのは文芸部の部室の窓だった。

あっ…。

『来て…』

『見に来て…』

『丈…もう…時間はない…』
丸山丈
丸山丈
うあああああっ!
溝口大輝
溝口大輝
おい、どうしたどうした?
突然頭の中で声が響いた気がした。

俺を呼び寄せる、不思議な声。

誰が呼び寄せたかは分からない…ただどこに呼び寄せられてるかはわかる。

…もう今の俺からすれば悪質なセールスのようなものでしかない。
丸山丈
丸山丈
いや?俺には関係の無い話だ。
溝口大輝
溝口大輝
あ、そう?
もうあの、"気味が悪い怪文書"に振り回されるのはやめよう。
永井先生
あっ、荒木ちょうど良かった。
お前ら今日これから部活だよな?
荒木澄香
荒木澄香
ええ、そうですけど…。
永井先生
これ多分お前らのだと思うんだけど。
ほら…文芸部の部室にあったし。
永井先生
持ち主聞いといてくれないか?
荒木澄香
荒木澄香
分かりました。
荒木澄香
荒木澄香
…ん?
荒木澄香
荒木澄香
"If story"…?

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