そしてあの更新から2日が経った。
"If story"や"Heavennovel"はおろか、まともにスマホすらいじれていない。
澄香とはまともに口を効かなくなった。当然部活にも行っていない。
後輩には適当なことを言って誤魔化してはいるが…まあそれも限界はあるだろう。
小説が…部活が…正直どうでもよかった。
ただ単純に…今ある日々さえ過ごせれば…
俺はマラソンの時間、そんなことを考えながら勢いよく走り出す。
俺が抱え込んでいる…言わばモヤモヤを取っ払うべく…。
いきなり転んでしまった。幸先が悪い。
こんなんでモヤモヤを取っ払うとかバカみたいだな、俺。
俺は後ろからやってきた溝口と話しながら並走する。
柴田も後ろからやってきて並走する。
こいつら、余計なことばかり言うんじゃねぇ。
お前ら、それ死体蹴りって奴な。
澄香がそう言って…それだけ言って足の遅い俺たち3人を押しのけて前に進んでしまう。
そうやって話しているうちにまた学校へ戻ってきた。
目標タイムギリギリ。運動不足は俺にはどうしようもない話だ。
俺は改めて学校を見上げる。
運の悪いことに、一番最初に目に入って来たのは文芸部の部室の窓だった。
あっ…。
『来て…』
『見に来て…』
『丈…もう…時間はない…』
突然頭の中で声が響いた気がした。
俺を呼び寄せる、不思議な声。
誰が呼び寄せたかは分からない…ただどこに呼び寄せられてるかはわかる。
…もう今の俺からすれば悪質なセールスのようなものでしかない。
もうあの、"気味が悪い怪文書"に振り回されるのはやめよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!