偶然というのは、時に恐ろしさを産むことがある。
…今がまさに、その状況だ。
俺は"If story"で書かれているこの言葉に見覚えがあった。
「誰かを蹴落とそうって考えると文章はどんどん汚くなる。認め合うんじゃダメかな?」
先程部活で澄香が言ってた…まあ厳密に言えば別の人間の言葉だ。
いやそれだけでは無い。細かな経緯こそ違えどあの小説と俺の日常には共通点がある。
部活が文芸部であること、2個上の先輩がいたのに1個上の先輩がいないこと、そもそもが…
要はそういうことだ。
俺たち文芸部の同学年の仲間は俺を入れて3人。
俺と…澄香と…
もう1人、今はもう亡くなってしまったが…上野怜美って奴がいた。"If story"と何ら変わりない。
俺は不思議な感覚を覚えた。
これを書いているのは俺の知っている人間である可能性が高いわけで、そうなると澄香あたりが1番怪しいが確証はない。澄香を除くと先輩か?後輩か?或いはストーカーのような者がいて…
なんだか怖くなってきた。やめよう。
ふと携帯にメッセージが届いた。
後輩である角田からだ。
泣いたって…あいつもうるせーな…。
俺の母親かっての。
そこから10分くらい待っても角田が次の文面を送ってくることは無かった。
あの野郎、俺の事からかってんのか?
…そうだ!あれ、聞かなきゃ!
角田では無かったか…。
ああでも、サイトを気にせず利用するタチの物書きかもしれないし…。
来た!やっぱりあの小説には角田が何かしらの関わりを…
…英語の話と勘違いしてただけだったか。
しかし角田の野郎、それが先輩に対する態度か…?
俺はそれだけ書き残して角田とのメッセージを終え、かつての先輩や今の後輩に同様にあの小説を知っているかどうかの質問のメッセージを打った。
ただ澄香には…とてもじゃないが送れる状況ではない。
メッセージが返ってくるまでどう時間を潰すか…
正直言って怖いもの見たさという感じだった。
3話であんな感じだ。4話にはどんなことが書いてあるか分かったもんじゃない。
でも見ずにはいられない。
見ろ、と頭の中で命令が鳴り響いているようで…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。