第16話

第7話・"いつか"がやってきた
22
2020/04/05 13:43
こうしてまた何日か経った。

結局あの後ショウタ君は部活に来ることもなければ、大会になにか作品を出すこともなかった。

私はそんなこんなで、虚無感がありながらも平凡な日常をすごしてゆくしかなかった。

でもね…

「ああちょうど良かった、ヒカリさん!」

先生が声をかけてくる。

「なんですか?」
「実はさっき連絡があって、ヒカリさんのあの小説が大会の市の予選を突破したらしいんだよ!」
「えっ…。」
「週末講評会が市民ホールであるからぜひ来て欲しいって!どう?行けそう?」
「行きます!絶対行きます!」

嬉しい報告だった。ある意味私が見つけた答えが、実を結んだ瞬間だった。

そして週末…

私は小説大会の講評会に出席するために市民ホールにいた。

自分の小説が霞んで見えるほどに力作の小説が勢揃いだ。
…こうなるとなんで私なんかが入賞したのか、よく分からない。

…あっ。

「おう。」

ショウタ君だ。しかも、私の小説を読んでる。

「テーマは"一家団欒"ね、悪くないじゃん。」
「ああ…ありがと。」

その場の空気が一気に気まずくなる。
でも慌てずに、少しずつ掴んだチャンスだ。

ここを逃したら今度こそ…!

「あの…ごめんね、ショウタ君。私あの時、変な意地張っちゃって…。」
「俺の方こそ…ごめん。俺の考えは少し間違ってたらしい。だからこそ…。」
「違うよ!」
「え?」
「間違ってないよ。だから私ね…。」
「私が…ああだから、ヒカリが何したんだよ。」
「楽しいことだけを考えて書いたんだ。私が憧れるものについて、考えられる全てのことをまとめた小説、それがこれなんだよ。だから誰かを蹴落とそうなんて全く思ってないんだ。」
「そうか…。じゃあ尚更すごいよ!その思いで、ここまで来れたんだから!」

ショウタ君が私を褒めてくれた。私も悪い気はしない。というより内心飛び上がりたい気分だった。

これで私の日常が帰ってくる。
私の中の虚無感が、少しづつ満たされてゆく。

「ヒカリ!ヒカリ!」

ショウタ君が私を呼ぶ。どうしたんだろう…。

「ヒカリ、スタッフさんに呼ばれてるよ?行かなくていいの?」

何だ、そんな事か、ちょっとショック。

でもいいや。これで私は…

私の日常は…

私の青春は、充実したものになるんだから!!!

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