第4話

4/28③→5/5
25
2020/03/22 10:00
と、こんな感じで"If story"の第1話を読み終えた。俺は再びサイトを閉じ、スマホをしまう。
アナウンス
アナウンス
間もなく樺村かばむら、樺村です。
丸山丈
丸山丈
あっ…!降ります!降ります!
人混みをかき分け、俺は電車から降りる。
そして駅に直結している駐輪場から自転車を取り出してそのまま家に帰った。
丸山丈
丸山丈
あの小説、もう一度読みたいな…。
晩御飯まで時間がある、と母さんに言われて自室で休憩していた俺は制服から再びスマホを取りだした。
そしてブラウザを開き、再びあのサイト、Heavennovelへ…
丸山丈
丸山丈
…あれ?
ブラウザからサイトに接続できない旨の警告文が流れる。

さっきまでは普通に見れたのに、変だ…。

数分おきに何度かやったが、結果は同じだった。

俺が来た瞬間に使えなくなるというのも悲しい話だが、致し方ない。

ただ不思議なことにもっと悲しいのは、あの小説そのものが見られなくなることだ。

何故だろう。どこに惹かれたかと聞かれて簡単に答えられる訳では無いが俺があの小説、"If story"を本能的に求めていることだけは理解することが出来た。

そうして俺は少し物足りない気持ちのまま寝床に着いたのである…。
5/5

あの不思議なサイトで奇妙な体験をしてから1週間、この日俺は制服を着て学校に向かっていた。
察しのいい人ならお分かりであろう、休日登校だ。

しかし授業があるとかそんなのでは無い。
強いて言うなら部活…いやそれも違う。
澄香に無理やり呼び出されたのである。
荒木澄香
荒木澄香
遅い。
学校に着いた俺を澄香は待ち構えていた。
何が「遅い」だよ…。
丸山丈
丸山丈
ごめん…。電車、1本逃しちゃって…。
まあ、やる気がなくてわざとやったけど。
荒木澄香
荒木澄香
まあいいや。じゃあ部室行くよ?
丸山丈
丸山丈
部活のために呼んだのかよ!
荒木澄香
荒木澄香
当たり前でしょ?
荒木澄香
荒木澄香
期限1週間だって言ったよね?
丈だけまだ作品、出てないからね。
丸山丈
丸山丈
お、おう。
そのためだけにわざわざ学校に呼び寄せたのか。
出さなかった俺も悪いがこの女、恐るべし。仕方なく俺は部室に向かうことにした。
荒木澄香
荒木澄香
で、出来たの?作品。
丸山丈
丸山丈
ああ、出来たよ。
俺はリュックサックの中から持ってきたノートを渡す。
丸山丈
丸山丈
じゃあ俺、この辺で…。
荒木澄香
荒木澄香
ダメ。
…へ?
もう務めは果たしたんだ。返してくれたって…。
荒木澄香
荒木澄香
やっつけ仕事だったら…分かってるわよね?
やはりこの女、恐るべし。

しばらく澄香は俺が書いた作品を読みこんだ。

そして…
荒木澄香
荒木澄香
悪くないじゃない。
これなら新入生に出しても大丈夫ね。
丸山丈
丸山丈
お、おう…。
心做しか俺の作品について語る澄香の顔が寂しそうに見えた。
その表情に少し戸惑いつつも、俺はノートを澄香から改めて受け取り、教室の外へと…
荒木澄香
荒木澄香
…バカ。
丸山丈
丸山丈
…え?
荒木澄香
荒木澄香
なんでもない。今日はもういいわ。
ほら、早く帰りなさい!
全く、人使いの荒いやつめ。
丸山丈
丸山丈
あっ。
学校を出るために階段をおりている最中、俺は再び思い出してしまった。"Heavennovel"、そして"If story"の存在を。

澄香に"悪くない"と言わしめたあの小説のオマージュをくれたアレををもう一度見たい。ダメ元かもしれないが…。

俺は半ば諦め気味にスマホのブラウザを開き、Heavennovelに…


入れた。

俺は必死に"If story"を探す。
丸山丈
丸山丈
あったぞ…。
しかも、2話まで…。
また、あの小説に合える。

しかも今度は、続編付きで。

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