6年前…
それはあたしが高校3年の1月のことだった
「莉緒ー、おはよ&あけおめ!」
「うん。おはよ」
「はよ、莉緒」
「慧、おはよう」
「もうセンターまで半月だよね~。あたし、大丈夫かな?」
「冬休みに皆で勉強したし、きっと大丈夫だよ」
その日は冬休み明けで教室内はセンターの話題でもちきりだった
ガラッ
「おら、お前ら。席につけ」
担任の先生の声にみんなが渋々席に着き始める
「明けましておめでとう。みんなも分かってると思うがセンター試験まであと少しだ。最後まで気を抜くなよ」
先生の言葉にため息をつく者、気合いを入れる者、緊張してる者
みんなの反応は様々だ
「そんな可哀想なお前らにお知らせだ。もうあとほんの少しだがこのクラスに転校生が入ることになった」
こんな中途半端な時期に転校生?
みんなもあたしと同じく疑問を抱いていた
「まあ、そんな騒ぐな。家庭の事情なんだからしょうがないだろ?じゃあ、入ってきてくれ」
ガラッ
先生に呼ばれて1人の男の子が教室に入ってきた
女子は喜びの顔を浮かべ、男子は少し残念そうな顔をしていた
カッ カッ カッ
先生が黒板に転校生の名前を書いていく
『時任 晶』
「時任晶くんだ。時任は県外から親御さんの急な仕事で転校してきた。短い間になるが仲良くしろな。じゃあ、みんなに一言」
「時任晶です。本当に短い期間ですが皆と少しでも多く思い出を作りたいと思ってます!戸惑うこともあると思いますがよろしくお願いします(ニコッ」
最後に時任くんが笑った
「!」
その笑顔は…まるで…
「じゃあ、席は真瀬(さなせ)の隣な」
「!?」
考えてる間に名前を呼ばれ、時任くんがあたしの隣の席に座った
「よろしく、真瀬さん」
「よ、よろしく」
これが彼との出逢いだった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。