あなたside
「…おっもい、」
体に重さを感じて目を覚ました。
横を見ると、
左側に侑さん、右側に治さんがいた。
改めて見てみると、
ほんとにかっこいい顔立ちをしていた。
しばらく治さんを見つめていると、
治「…そんな見つめんなや、照れるやろ?」
そう言いながら目を開けた。
「あ、おはようございます…」
見つめてるのバレてたのか、
治「おはようさん。腹減ったわ、」
昨日の夜あんなに食べてたのに?
「朝ごはん作りましょうか?」
そう言うと目をキラキラさせて、
治「ええの!?」
ほんとに食べることが好きなんだなぁ。
「はい!」
ベッドから出るために起き上がろうとすると、
侑さんの腕が腰にまわっていて動くことができなかった。
治「ツム離せや」
先に起き上がっていた治さんが侑さんを蹴った。
…大丈夫なのかな?
そのおかげで離れてくれたけど、
侑さんが起きる気配はない。
治「ツムはほかっといて朝飯や!」
朝ごはん作ってる間に起きてくるかな?
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冷蔵庫にある食材で簡単に、
焼き鮭、卵焼き、豚汁、ご飯を用意した。
「簡単なもので申し訳ないです…」
治「めっちゃ美味そうや!食うてええか?」
「はい!」
すごい嬉しそうに食べてくれてる。
治さんはご飯を作ってあげたくなる人だなぁ。
あ、侑さん起こしに行かなきゃ。
(寝室)
…まだ寝てる。
気持ちよさそうに寝てるなぁ。
「侑さん、侑さーん。起きてください。」
そう言いながら侑さんの体を揺する。
侑「…な、んやねん、うっさいわぁ、」
お?起きてきたかな?
「侑さん!朝ごはんできてますよ!」
侑「うっさいねん!!!」
…び、っくりした。
侑さん、寝起き悪すぎでしょ。
侑「あなたやったんか!?す、すまんな?
サムかと思うて…ほんますまん!」
「気にしないでください。ほら、朝ごはん冷めちゃいます!」
そう伝えると、「朝飯あるんか!?」と言って寝起きとは思えない動きの速さでリビングへ向かった。
(リビング)
侑さんに遅れてリビングに入ると、
侑「なんでなん!?」
治「なにがやねん。」
2人が言い合いをしていた。
「どうしたんです?」
侑「サムが俺の鮭食ったんや!」
治「焼き魚は温かいうちに食べんとまずなるんや。」
侑「人の食っていい理由にならんやろが!!」
そ、そんなことか…
侑「俺の鮭返せや!!」
「侑さん!すぐに新しいの焼きますから!
他の食べといてください!ね?」
治「もうすぐ家出る時間やで?」
え?家出るって、
「今日何かあるんですか?」
侑「あっかん!北さんに怒られてまう!」
侑さんは叫びながらリビングを出ていった。
北さん?って誰だろ。
治「今日1日部活あるんや。」
あぁ、部活…
「なるほど。」
治「それであなたにお願いがあるんやけど。」
真剣な顔で何を言ってくるかと思うと、
治「お弁当作ってほしいんや。」
お弁当ですか。
「いいですよ!任せてください!
できたら学校までお届けしますか?」
少し考え込んで、
治「そうやな頼むわ。」
そう言うと同時に赤いジャージと白いズボンを手渡してきた。
「えーっと、これは?」
治「稲荷崎のジャージや。私服では校門通れんからな。」
これを着て来いってことね?
「ありがとうございます!」
治「ほなもうそろそろ行くわ。」
「侑さんは一緒じゃなくていいんですか?」
侑さんの朝ごはん用のおにぎりを作りながら聞く。
治「ツムは準備遅いねん。」
それだけ言って部活へ向かった。
その5分後くらいに、
(バン!!)
リビングのドアが思いっきり開いた。
侑「サムは!?」
「もう行きましたよ!」
侑「また先行ったんか!?俺も行くな!」
「あ、侑さん!」
おにぎりが3個ほど入った小さな袋を投げる。
侑「おっ。」
ナイスキャッチです!
「朝ごはん食べてないですもんね!おにぎり作っておきました!」
侑「おおきに!!」
侑さんは嬉しそうな顔で出て行った。
…よし!
お弁当作りますか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!