あなたside
服装は安定に、量産系。
髪型は……下ろして、
…これで完璧。
準備を終えた私は握手会の会場に向かった。
ーーー
握手会までの道には、たくさんのリスナーさんが居た。
この人もあの人もさとみくんのリスナーさんか。
でも、私の方がさとみくん好みの容姿に出来ている。
リスナーの女の子達は握手会場に行こうとしているのと反対に私は、端の方のドアまで歩いて行った。
まずはさとみくんに合わなければならない。
きっとこういう、
" 関係者以外立ち入り禁止 " とか書かれたドアの奥に居るはず。
思い切ってドアを開けると、
さとみくんところんくんが立っていた。
やっぱりね。
ここは間違えたという風にしておこう。
こういうときに申し訳なさそうに少しモジモジすると良いだろう。
私の作戦はここで終わりじゃない。
これからが本番。
私は慌ててドアの外へ出た。
良し。
___これでカンペキ。
ーーー
さとみside
俺がころんと話していると、立ち入り禁止のはずのドアが勢いよく開いた。
少しウェーブがかった髪を下ろして、量産系の服を身にまとった女の子が驚いた様子で立っていた。
" 立ち入り禁止 " のドアを間違えて開けるか普通。
でも、この子の純粋な瞳、自然に下がっている眉毛からは、どこか幼くて純粋な感じが伝わってきた。
その子は慌てて出ていってしまった。
ころんが指さしたのは、床に落ちているピンク色のハンカチだった。
拾い上げて手に乗っけると、「あなた」と刺繍してあった。
あの子、あなたちゃんって言うのか。
ハンカチをズボンのポケットに突っ込んで、ころんと握手会場まで走った。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。