あなたside
2時にファミマ。
本当に来てくれるかどうか不安になりながら、当たりを見回す。
走ってきてくれたのか、息切れしているさとみくん。
マスクなんて付けちゃって、それで顔を隠してるつもりなのだろうか。
このうるうるした可愛い瞳で、すぐさとみくんって分かるから意味ないのに…。
私は意味もなくさとみくんをじーっと見つめていた。
さとみくんがポケットから出したのは私のハンカチだった。
私は、両手でハンカチを受け取った。
少し恥ずかしそうに言ってみた。
こんなにあざとくしてる自分がキモいと分かっていても、さとみくんを落とすためなら仕方ない。
用は済んだと言わんばかりに、軽く手を振ってニコッとされた。
さとみくんの背中が少しずつ小さくなっていく。
私も背を向けて、反対方向に歩き始めた。
これでもうこうやって会うことなんてない。
もうこれっきり。
だから…
「ボキッっっ!!!」
ドブにヒールをひっかけると、いい音を鳴らしてヒールが折れてくれた。
さとみくんは私の元へ駆け寄った。
推しにおんぶしてもらうだなんて…。
私って天才かも。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。