儚が加わり、私たちは早速ある森へ着いた。
そういえば儚には目的地を伝えてなかったな、と思い出し少し申し訳ない気持ちになる。
言ったら怒るかなぁ‥‥
月人は提灯を持って私たちの前を進んでいる。
すると、月人が『ここら辺にしよっか』と落ちている枝を集めてそれに提灯の火を移した。
私が目を輝かせていると、月人が申し訳なさそうに私を見た。
何かあるのかな‥‥?
私はその言葉を聞いて、月人って何気に紳士だよねー、とか思いながら少し笑った。
あの誕生日の夜のこと。
地面で寝ちゃったからあれは野宿で良いんだよね?
はぁ、と呆れたように溜息を吐く儚。
すると月人は、荷物の中をあさり始めた。
そして三枚の毛布を出した。
さすが月人、準備が良いことで。
そんな月人の言葉を聞いて、むぅ、と口を脹らませる儚。
兄と、弟‥‥みたいだな、なんて思いながら、私は毛布を二枚取って儚に両方とも渡した。
私がそう叫んでいると、儚が面白そうに笑った。
何気に、儚が笑ったところ初めて見たかもしれない。
そう言って毛布一枚だけを私の手から取って焚き火に寄る儚。
屈辱って‥‥、と私は少し笑って儚の隣に行った。
私と儚の話を聞きながら苦笑する月人。
月人はともかく儚とはこれから仲良くやっていけるか心配だったけど、これなら大丈夫そう。
そういえば、月人と儚って何で知り合いなんだろう‥‥。
儚も神無月のこと知ってたし、ただの顔見知りってわけじゃなさそうだし。
少し、聞いてみようかな‥‥
突然のことだった。
月人は持っていた水で焚き火を消して私の口を押さえる。
月人も儚も、辺りを警戒しているように見えた。
どうしたんだろう‥‥と思いながら息を潜め、辺りを見回す。
すると、後ろの方からカサッという草が擦れ合う音がした。
あ‥‥この感じ────
────ケガレだ。
伏せてと言われ、月人に頭を掴まれて地面スレスレまで頭を降ろした私は物音のした方に目をやる。
儚が攻撃に気付かなかったら、月人が私の頭を下げなかったら、私は首を斬られていた────そう予測が付くくらい辺りの木々は一定の場所でばっさり切られている。
ケガレがいたのは間違いない。
けれど、そこにはケガレどころか草木しかなかった。
儚や月人にも見えていないようで、さっきよりももっと警戒を強めているようだった。
そうか、これが‥‥‥
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。