───────パチパチ‥‥
たき火の音が聞こえる。
私は寝ていた体を起こして、辺りを見回す。
壊れた家。砕けた陶器や小物。そして、所々にある血の付いた錆びた刀。
月明かりが照らしているのは、惨い有様のものばかり。
まるで、落城の地だった。
そういえば街で噂してたっけな。
確か名前は‥‥‥
たき火を挟んで向こうにいたのは、黒髪の青年だった。
黒髪の青年は研いでいた刀を私に向ける。
黒髪の青年はいたずらっぽく笑う。
‥‥‥かっこいい。
‥‥‥‥‥‥じゃなくて。駄目だよ、私。まだこの人信じちゃ駄目。会ったばかりなんだから。
そういえば、傷を治したって言ってたけど‥‥私、ケガレに肩食べられてた気が‥‥
自分の肩を見ると傷一つ無く、破れた着物に血が付いているだけだった。
他に怪我した所も、同じだ。
黒髪の青年は、眉間にしわを寄せる。
鬼殺の実‥‥‥?
黒髪の青年は、私にツッコミを入れた後に《鬼殺の実》の説明を始めた。
果実であんなに強いケガレを殺す‥‥‥?
背筋が凍る。鬼殺の実を飲んだなら、やがて私も‥‥‥
私は勢い良く立ち上がり、叫んだ。
黒髪の青年は自分の肩を指差した。
私はそれにつられて自分の肩を見る。
‥‥‥治っている。さっき見た時と同じだ。
すると、黒髪の青年は少しだけ口角を上げた。
人殺しなのは合ってる‥‥‥?
そう言って苦笑する黒髪の青年は、どこか痛々しく見えた。
そんな顔されて、忘れられるわけがないじゃないか。
でも、誰しも人には言えない事一つや二つはあるのだ。ここはあまり詮索しない方が良さそう。
すると黒髪の青年は、『ありがとう』と言いながらふっと笑った。
‥‥‥やっぱり、その笑顔はどこか痛々しく見えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。