あの日から1年が経ち
今日は彼女の命日。
あなたのことを考えながら
ふらっと庭に出た
12月のこごえる寒さの中、
外は冷たい雨が降っていた
しばらく空を見上げてぼーっとしていると
遠くからほのかに光って
何かがこちらへ向かってくるのが見えた
蛍だ。
もしかして、もしかしたら
あなたなんじゃないのか?
その蛍は近づいてきて
俺の前をフラフラと飛んでいる
何となく呼びかけると
蛍が強く光ったんだ
あまりの眩しさに
俺は目を閉じた
目を開けると
さっきまで降っていた氷雨が止んでいた
雲は消えて行き
数分のうちに
真っ青な空が広がった
蛍はまだ
俺の目の前で飛んでいる
本当にあなただったのかな?
きっとそうだ。
『私も大好きだよ!』
気のせいかもしれないけど
あなたの声が聞こえたような気がした
懐かしくて
優しい声。
その声を聞いて
自然と涙がこぼれた
今更伝えられないと思ったけど
今なら届く気がするんだ
自分だけに聞こえるくらいの声で
そう呟いた
蛍は高く上がって行き
空高く飛んで行った
俺はその蛍を
見えなくなるまで見つめた
もしあなただったのなら
俺はまた
君に恋をした。
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終わり
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。