第2話

離れに住まう事となり
55
2019/03/08 02:22
この巨大なグランドホテルの中庭の離れに、支配人室はありました。
今日から、この離れが私が寝泊りをする場所のようです。

見るもの全てが新鮮で座る事も忘れ、ただただ驚いている私に、
白菊さんは紅茶を出してくれたのですが、
千代鶴
千代鶴
お、美味しいです!
桂白菊
桂白菊
最初のお勤めご苦労様でした。
ふふ、かわいらしい笑顔ですね。
それよりもアールグレイ ヒマラヤンブルーム、お気に召していただけたようで何よりです。
初めての方には、少々馴染みのない香りかもしれませんので、いささか心配しておりました。
千代鶴
千代鶴
とっても美味しいです!
このお茶は、お花の匂いがするんですね。
素敵・・・。
この分厚いおせんべいも、とっても美味しいですよ!
不思議な食感で。
桂白菊
桂白菊
なんとも美味しそうに頬張るものです。
まるでハムスターのように。

それはスコーンでございます。

さて、
それでは、話の続きに戻りましょうか?
姫君には、近くの学校に転入して頂きます。
帝都師範学校。
聞いたことぐらいはあるでしょう?
全国からその学び舎に精鋭達が目指しやってくる。
千代鶴
千代鶴
試験などはあるのでしょうか?
桂白菊
桂白菊
本来ならば・・・。
ですが、
ここには、私の古くからの友人が勤めておりましてね。
千代鶴
千代鶴
う、うらぐちから、こんにちは、と言うやつでしょうか?
桂白菊
桂白菊
ほら、習うより慣れろというでしょう?

後は、姫君の努力次第。

いきなりグランドホテルの支配人の全てを勉強するよりは簡単な事と存じますが。
千代鶴
千代鶴
ががが、がんばります。
桂白菊
桂白菊
それでは、明日から六友りくゆうと一緒に通学して頂きます。
まあ、用心棒のようなものとお考えいただければ差し支えないかと。

入りなさい。
支配人室の大きな扉がゆっくりと開く。
どんな強面の人がやってくるのかと思ったが見当たらない。
いえ、そこには美しい少年が控えていた。
六友
六友
白菊様、ここに。
千代鶴
千代鶴
綺麗な人・・・
桂白菊
桂白菊
六友りくゆうと言います。
手先の器用なものでして、桜花荘では営繕係を担当しております。
千代鶴
千代鶴
営繕係?
桂白菊
桂白菊
家具や調度品の修理屋さんと言ったところですか?
姫君よりも年は一つ上の16歳。
学内での身の回りの世話は六友りくゆうが見てくれます。
六友
六友
姫様、お初にお目にかかります。
六友りくゆうと申します。
学業の友から眠れぬ夜の子守唄まで、何なりとお申し付けください。
千代鶴
千代鶴
あの、松屋町千代鶴と申します。
宜しくお願い致します。
桂白菊
桂白菊
姫君、私は業務に戻ります。
時折顔を出すようにしますが、何かあればフロントまでお越しください。

では、六友りくゆう、後は頼みましたよ。
六友
六友
お任せください、白菊様。
凛々しく歩いていく白菊さんを目で追ってしまう。
それに気づいたのか、優しく微笑んで彼は仕事に戻ってしまった。
六友
六友
さあて、明日の準備もしなくちゃいけないけど、まずはお風呂にでも入ったら?
疲れてるんでしょ?
千代鶴
千代鶴
あ、そうですね。

お風呂はどちらでしょう?
六友
六友
寝室の奥ですよ。

ここのお風呂は露天風呂になっていて、本館に勝るとも劣らない立派な作りになっていてね。僕も一度入ってみたいと思っていたんだ。
千代鶴
千代鶴
まあ、ではもし宜しければ一緒にはいりませんか?
六友
六友
僕はいいけど。
千代鶴
千代鶴
私、お風呂が何より大好きで、
湯船に浸かりながら、
色々とこちらの事など教えて頂けませんか?
六友
六友
OK♪
じゃあ、着替えと寝間着を用意するね。
千代鶴
千代鶴
ありがとうございます。
六友
六友
あの、確認だけど。
千代鶴
千代鶴
はい?
六友
六友
僕、男のコだからね。
念の為。
千代鶴
千代鶴
そうなんですか、

ん?

ええ〜っ!?
つづく

プリ小説オーディオドラマ