「これって……」
「そうだ。俺だってちゃんと調べたんだ。」
何枚かの写真。
そこに写されていたものは、本来のいじめっ子であろう人がその子をいじめていた場面。
「これ、どうしたんですか。」
「アイツらがいじめをしてたことは薄々気づいてたんだ。しかも、俺らが見に行けない休日、職員会議の最中にしてたことも。だから、試しに隠しカメラを仕掛けてみたんだ。」
隠しカメラ……?
「そしたら、その場面が写ってて確信したよ。ちゃんとした証拠だ。でも、俺が勝手に隠しカメラなんて仕掛けたことはよくないことだった。だから、まずはそいつの親に会いに行ったんだ。」
* * *
ここが桐島の家か……
さすが、桐島の娘だ。
社長令嬢だもんな。
この豪邸に足を踏み入れるのは少しためらうが、これじゃあ久堂も月城も報われない。
俺は覚悟を決め、インターホンを押した。
"どちら様ですか?"
桐島の声にそっくり……いや、桐島が母親にそっくりなのか。
「麗華さんの担任の太田と申します。」
「あぁ……何か?」
インターホン越しだが、だいぶ不機嫌そうなことが伝わる。
「娘さんのことで、大事な話がありまして……」
ガチャ と音を立てて門が開く。
「どうぞ。」
「失礼します。」
はぁ……
八つ当たりされてもなぁ。
有名私立中学を受験してたんだろうけど、落ちたからって俺たちは悪くないっつーの。
そうは思いながらも、失礼はあってはいけない。
ふぅ……と息を整えて、スーツを伸ばす。
二段階のインターホンか。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」
靴を揃えて置き、振り返ると桐島の母親はスタスタと歩いて俺をリビングへ案内した。
広いし、家具も高級そう。
絵画なども飾ってある。
そんなことを感じていると、桐島の母親……ではなく、お手伝いさんらしき人が何か高級そうな飲み物を運んできた。
「ごゆっくり。」
「ありがとうございます。」
何ティーか知らんが、すごいものだということだけは分かる。
さて……話を始めようか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。