「ごめん、瑠海。私の姿は瑠海にしか見えないの。向こうの世界で一人私の姿が見えるようにする人を選ぶ、そのときに私は瑠海を選んだ。だから、おばあちゃんには見えないの。」
そんな……
「ほ、ほら、帰るわよ!」
「ばあちゃん、今ここにね、來海お姉ちゃんがいるの。」
「えっ?來海のこと、なんで瑠海が知ってるの?」
それから私は一生懸命説明した。
來海お姉ちゃんは幽霊としてこっちの世界へ来たこと。
來海お姉ちゃんは私に本当のことを教えてくれたこと。
でも、復讐のことは言わなかった。
何か言ってはいけないような感じがしたから。
「來海……來海がここにいるのね?
來海……ごめん、來海ごめんね。」
ばあちゃんは見えない來海に向かって謝り続けていた。
涙を流しながら。
「瑠海、ありがとう。この言葉、來海に伝わってるかしら?」
「伝わってるよ、來海聞こえたよ。」
「來海お姉ちゃん、聞こえたって。」
しっかりばあちゃんの声、來海お姉ちゃんに聞こえてるよ。
「そう……來海には本当に申し訳なかったわ。瑠海にも申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。」
私にも?
そう思っていると、來海お姉ちゃんが少し悲しそうな顔をして
「ごめん、瑠海。私、一日にこっちへいれる時間が決まってるの。だから、もうこの辺で。」
と言った。
一日にいれる時間まで決まっているのか。
「わ、分かった!」
「また明日ね。」
「うん!」
また明日、ここで待ってるね。
來海お姉ちゃん。
そう心の中で呟いた。
「ばあちゃん、來海お姉ちゃん、こっちにいれる時間があって、もう帰っちゃった。」
「そうなの……不思議ねぇ…。」
「うん。」
そして、私とばあちゃんは家に帰った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。