第27話

懐古
298
2023/03/04 13:24
ベジータside

俺があなたと出会った時、俺はまだガキだった。年齢がまだ1桁だったと言っても良いような頃だ。



父親が「お前の世話係兼星の制圧の際の同行係だ」などと言って、会わせられた。最初はあなたに興味はなかった。態々誰かを同行させずとも、俺の戦闘力があれば1人で星1つくらい簡単に制圧出来る。問題なかったのだ。



父親が入れと言うと、あなたは入って来た。俺は女だったのかと驚いた。この俺にそのよく分からん世話係的な奴を寄越してきたことは良いが、何故女なんだと疑問に思った。
あなた
あなたです、宜しく!
俺に視線を合わせてしゃがみながらニコッと笑ったあなたに、俺は不思議とドキドキしたのを覚えている。母親以外の異性に出会ったのが初めてだったからだ。



まさか俺が緊張などするはずがないと困惑したが、あなたを前にして奇妙なほどにドクドクと鳴る心臓の音がそれを悉く否定した。あのドキドキを、未だあなた以外の異性の前では味わったことがない。不思議な奴だと思った。



まあ、どうせコイツと関わる時なんて殆どないだろうと思った。コイツも、俺に引っ付いて回るような真似は恐らくしないだろうと思ったからだ。大体の奴は俺に恐れをなしてそうするからな。



しかしあなたは違った。どこの星に行こうが必ずついて来た。そのうち俺はラディッツなんかとよく制圧に行くようになったが、いざ帰還しようとした時負傷したラディッツを抱えて颯爽と現れたなんてことが山ほどある。



来なくても良いと言ったことがあったが、あなたは懲りずについて来た。だが、当時の俺は今よりも頭もガキだったため、あなたがどれくらい強いかなど考えたことがなかった。どうせ俺より弱いであろうと決めつけていたからだ。



その頃、一度こう言ってしまったことがある。
ベジータ
お前がいたところでどうせ大した戦力にはならん!俺1人で充分だ!
当時の俺は言い過ぎてしまったなんて考えなかった。純粋にそう思って言っていた。なんだかんだあなたが戦っているところを見たことがなかったからだ。



丁度その場にいたラディッツは「あなたはお前が思うよりもずっと強いぞ」と言っていたが、ラディッツは元々雑魚だから信用できなかった。自分の目で確かめたかった。



あなたはどう反応するか、と思ったがその時あなたは傷付いているような素振りを微塵も見せなかった。もしかしたら上手いこと隠していたのかもしれないが。



傷つくどころか、寧ろ不敵に笑ったあなたに俺は柄にもなく戸惑った。何を考えているんだ、あなたは。
あなた
君いつから私を弱いとかナメてやがるのかな?ん?怒らないから言ってみ?
ベジータ
な……何だと…!?
今まであなたが自分にこんなことを言って来たことがなかったので、絶句した。怒らないからと言っていたが、オーラと気で既に怒っていることだけは分かった。



困惑する俺に、あなたは自信を持って言い放った。
あなた
そんなに私が弱いと思うんなら、証明しなきゃね。さ、どっからでもかかって来なよベジータ王子!

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