新惑星ベジータに着いた俺達は、あなたを起こして宮殿へと戻った。あなたが殺風景だから苦手だと言っていた薄暗い宮殿に。
伝説の超サイヤ人は見つけられなかったと言うことにしておこうと話したベジータは、親父の前でそれらしく芝居をする。
まだボンヤリとしているのか、欠伸をしているあなたと共に歩いていた時だった。「よう、ベジータ」と声をかける聞き慣れない声が耳に入った。
その瞬間、あなたは驚いて瞬時にソイツを見た。そこにいたのは、俺の知らない男だった。ベジータの知り合いと見て取れるが…。
いかにも人当たりの良さそうな笑みを浮かべてそう話す男。いつの間に来ていたのかと思ったがまあどうでも良い。コイツもあなたに近付かないよう警戒するのみだ。
横にいるあなたを見た時、俺は驚いた。あなたが目をキラキラと輝かせて顔を少し赤くしながらソイツを見ていたからだ。なんなんだ、コイツもあなたの知り合いなのか?些か異性の知り合いが多過ぎるんじゃないか…!?
ダメだ、あなたをこれ以上俺以外の男に近付けるわけには、と思ったが既に遅く、あなたはソイツに近付くなり嬉しそうな顔で言った。
ニコニコしながらソイツの頭を撫でたり顔を触ったりしているあなた。挙句の果てには抱きつく始末。いくらなんでも警戒心がなさ過ぎる…!!
しかも何が恐ろしいかと言うと、ソイツは照れ臭そうにしながらも決してあなたを拒絶せず、寧ろ受け入れるかのように抱きしめ返したのだ。あなたは一層喜んで、まるで飼い主が大好きな犬のように甘えていた。
更に更に、アイツの名前はカカロットとか言っていた。実を言うと俺はカカロットに恨みがあるのだ。ずっと小さい頃の話だが、今でも恨み続けている。そんな奴があなたにあそこまで甘えられているのだから、俺の怒りは一瞬にして頂点に達した。
カカロットからあなたを引き剥がそうとした時だった。先に察していたらしいベジータが口を開いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。