そんなこんなで一悶着あったが、なんとか俺達がいた星の制圧に成功し、次はいよいよ地球だなと話していた。その星にはラディッツの弟であるカカロットがいるらしいのだ。
あなたも「ラディッツの弟って言うからな〜」などと言って、カカロットに随分と興味を示しているようだった。
そう笑顔を浮かべながらそれぞれの宇宙船に乗る。飛び立った俺達は、暫くそのまま飛行していた。
こんな日々が続くと思っていた。なんだかんだ、コイツらといることは嫌いではなかったからだ。しかし、ここで想定外の事態に陥ってしまった。
あなたの宇宙船が突然故障したのだ。あなたの行動に焦りは見られず冷静だったものの、その表情は困惑に満ちていた。
心配になりながらも、あれこれと試してみるあなたを見ることしかできなかった。しかし、その努力も虚しくあなたの宇宙船は俺達からみるみる離れていく。
あなたは俺達に向かって窓越しに何かを必死に叫んでいた。生憎読唇術など身につけてはいなかったので正確になんと言っていたのかは分からないが、なんとなく「必ず合流するから」と言っていたような気がした。
俺達はすかさずあなたの宇宙船を追ったが、やがて回避の困難な小惑星帯に来てしまい、見失ってしまった。
ただ、コントロールの利かなくなったあなたの宇宙船が小惑星に何度も叩き付けられている様子しか見えなかった。煙の出ている宇宙船を見た俺は、あの状態ではあなたはもう…と内心思っていた。
ふと、思い出したようにラディッツを見た。まさか自分の好きな人が、告白した直後にこうなるなんて思いもしなかっただろう。顔を真っ青にして唖然としていた。
その後一度落ち着くためにそこら辺の惑星に不時着したが、ラディッツは終始震えながら落ち着きを取り戻せそうにもない様子でいた。
その時のラディッツの目が、今までになく真剣な目であったことは今でも覚えている。そりゃそうだ、好きな人があのような目に遭ってしまったのならば、心配して当然なんだろう。
現に、俺も心の奥底ではあなたを心配していた。何でそこまで心配していたのかなんて分からなかったが、ここまでのラディッツを見るに、もしかしたら自分もあなたに対してラディッツと同じ気持ちを抱いていたのではないかと思った。
そんなラディッツの一言により、俺達は暇な時間が出来たらその時間は全てあなたの捜索に充てた。しかし、いつまで経ってもあなたが見つかることはなかった。目撃情報すら得られなかった。
あなたがいなくなってから、俺達全体の雰囲気もどこか荒んで殺伐とし始めた。俺とラディッツが言い争いになった時も、ただ空気が険悪になって終わるだけ。俺達の口喧嘩を仲裁していたのもあなただったからだ。
何年経ってもあなたは見つからず、結局俺達はあなたなしで地球へと向かった。この頃には俺もラディッツももう良い歳した大人になっていた。時の流れは早いものだ。
地球に着いてから暫く経つと、ラディッツがカカロット一行にやられたと言うことが分かった。これは後々カカロットから聞いて知ったことだが、トドメを刺される直前にあなたの名前を呟いていたそうだ。こうしてラディッツは自分の恋を叶えられぬまま死んでいった。
再び地球を訪れた際には、カカロット達が粘ったお陰でナッパが動けなくなったので、使えないと思い俺が殺した。
あなたが「大好き」と言っていた仲間はこうして消えて行ったのだ。あなたが知ったらどんな顔をするだろうと心のどこかでは思っていた。
そうして気付いたら俺は地球に居座るようになっていたし、結婚して家庭を築いてしまっていた。トランクスと言う息子もいる。しかし、俺の頭の片隅にずっとあなたはいた。
アイツは今どこで何をしているだろう。そもそも生きているだろうか。そう考えてボーッとすることが増えた。ブルマ達に心配されたので、俺はよくあなたの話をするようになった。
そんなある日のことだった。花見の席に呼ばれた俺は、クリリンが「翼をください」とか言う歌を独特な歌い方で盛大に歌っているのを聴いていた。
そこにパラガスとか言う奴がやって来たことにより、新惑星ベジータへと向かった俺は漸く……あなたとの再会を果たしたのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!