私が近付くにつれて、先程までの威勢は見る影もないほど震えながら「近寄るな」とだけ、震える声で言うブロリー。また私を傷つけてしまうかもしれないと思っているんだろう。
でも私は聞かないよブロリー。私が大丈夫だってことをブロリーに教えてあげたいから。なんとかして、ブロリーと共に穏やかに生きていける方法を探して行きたいから。
そう言ってハグの構えをすると、目から涙をボロボロと流すブロリーは凄い勢いで私に飛び込んで来た。あまりの勢いに思わず「フグゥ…ッ!」と、イルカにどつかれたフグのような声が出たが、なんとか受け止めた。
ブロリーは必死に嗚咽を抑えながら私を締め付けるように抱きしめていた。でも不思議と今は痛いと思わなかった。普段だったら「力弱めてよ〜」と言って背中をバシバシ叩いていたと思うが。
恐怖して震えながら小さな声でそう呟くブロリーに、少し大きな声を上げて私の話をなんとか聞いてもらえるよう意識を逸らす。ブロリーは肩を小さく跳ねさせた。
少し離れて、ブロリーの目を真っ直ぐと見た。普段真っ暗で何も見えない彼の目には、キラキラと涙が光って見える。顔が少し赤くなっていた。結構来ているんだろうなと思う。だからこそ伝えたい。
自分の制御が効かなくなったことで、一番傷付いているのはブロリーだってことを知っている私だからこそ、私なりの言葉をかけてあげたいんだ。
溢れんばかりの涙を流しながら私を見るブロリーは、今にも壊れてしまいそうなほど儚かった。今朝からしている胸のざわつきのせいか、ブロリーは少しでも目を離したら消えて無くなってしまいそうに見えた。
…恐らくだが、計画上で考えればベジータ王子がブロリーと戦うことになる可能性は大いにある。もし、その時ブロリーが理性を飛ばしてしまったら。なんとしても私が止めなければならない。
ベジータ王子やカカロット達を守るためでもあるが、何よりブロリーのために。私が今本気にならなければならない。
正直、私にブロリーを止められると言う確実な自信は…ない。ブロリーこそが伝説の超サイヤ人なのだから、ただの一サイヤ人に勝てるはずがない。マトモに太刀打ちなど出来たものではない。無謀も良いところだ。少なくとも、今の私が力でブロリーに勝てる確率は0だ。
………いいや、怖がってる場合なのか?こんな時になって怖がってるなんて、それこそ私のサイヤ人としてのプライドが廃ってしまう。怖がっていたら、ブロリーを止めてみせると言った癖に意志が弱いにも程があるではないか。
やるしかない、もう逃げ場はないんだ。止めて見せると言ったからには…私の大好きな仲間を守るには、怖がってる場合じゃないんだ。
私が皆を助けて見せる。そのためなら命だってかける。
私に抱きついて静かに泣くブロリーを抱きしめ返しながら、決意した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。