私は鬼とやらになった「らしい」
なぜ「らしい」かと言うと
人間の頃の記憶がないからだ
でも僕は人を喰えない
人を殺せない
だから逃げ出した
鬼から鬼が
そこである人に出会った
その人は言った
「私は鬼殺隊柱胡蝶しのぶです
今からあなたを切ります」
と
僕は鬼が嫌だった
だから斬られるならそれでいいと
そう思った
僕が何も抵抗しないでいると
その人は言った
「何人殺しましたか?」
と
僕は人を殺せない
だから「殺していない」と言った
するとその人は
「本当に食べたことがないのなら
私の継子になりませんか?」
と
僕は継子が何か知らなかった
でも
それでも
人を殺せと
人を喰えと
言われないのなら
この鬼から抜け出せるのなら
僕はただ
「はい」と
一言だけ言った
これは鬼である僕が
鬼殺隊柱胡蝶しのぶに
出逢うまでの物語
及び出逢ってからの物語である
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。