第10話

偽善者が9人
7,399
2021/04/11 22:02
(自室
カリム
……パチッ
まだ日が昇っておらず当たりが薄暗い中、前世の時からなおせない癖で起きてしまった


…はあ……またやってしまった……………

これから何して暇をつぶ……




そういえばもうお世話役のジャミルにはバレていたんだったな…
だったら遅くまで寝ている典型的なおぼっちゃまの“ふり“なんてしなくてもいいな

ふと思い出し、1人で寝るにしてはでかいベッドのシーツのシワ等を整え衣服などがあるウォークインクローゼットへ向かう

いつもの服を取り出しぱぱっと着替えた

そして勝手に屋敷の外に行って←買ったメガネを棚からだしかけた

?なぜメガネって?
夜に暗い中本を読みすぎて視力が悪くなったんだよ←

本棚にいくつもある書物の中の1冊を取り出し内容を読んでいく、新しく学んだことをノートに書き留める

これも学生時代から続く前世の癖だ

俺は3歳頃からこのようなことをしているためノートは今や何十冊となっている
これが見られたらおおらかであり、したたかでもある父様に全てがバレてしまう

なので金庫に入れ、さらに隠蔽魔法などを何重にもかけて厳重に保管していた

ここまでしなくても良くない?と思う人もいるだろう

しかし普段は子供に甘い親バカであろうと俺の
父様は腐ってもこのアジーム家の当主

油断は禁物だ

一応誰が来ても対応できるよう自分にも認識阻害魔法をかける、そしてノートに向き直った






(数時間後____ジャミルside



いつも通り、朝食を作ってカリムが起きるであろう時間に部屋へ向かう

プレートを片手で持ち、ドアをノックして入る

ジャミル・バイパー
カリム、そろそろ起き……
言葉が続かない

なぜなら




自分の能天気な主が起きており、寝間着ではなく既に着替えている。しかもベッドは綺麗に整えられていた

その上、メガネをかけて分厚い本でも読んでいるとなれば、言葉も出なくなるものだろう


………あ、そういえばあの能天気なやつはカリムの演技だったか。だったら変わるのも当ぜ…


いや、こんな変わるか??
しかもなんでこいつ1人でだいたいできているんだよ、あとメガネどこで買った、お前そんなの持ってなかっただろ、そのノートもなんだ、その内容確か高校生でも難しいと父さんが言ってた気が………





は???????(混乱)
カリム
そんなにほうけてどうした?ジャミル
頭のなかで大混乱している俺をどうしたという目でじっと見る

やめろ、俺が変みたいになるだろ←そのとおr(((
ジャミル・バイパー
……いや、今までのお前と違うと分かっていても少し頭が混乱してきて
カリム
なんだ、それか
カリム
だったら無理はないな、……あ、これから別に俺の世話は無理にしなくていい
ジャミル・バイパー
カリムの一言に唖然とし、銅像のように身体が固まる
カリム
人にやってもらえなくても俺はだいたいできる。あ、飯だけは無理だな、キッチンに入らせてもらえないから練習の仕様がない
淡々とノートにペンを走らせながら述べていく


…なるほど、もう世話はしなくていいのか

じゃあ俺はのんびりと




……って、無理に決まってるだろ!!
ジャミル・バイパー
いや、俺なんのための従者なんだ
カリム
?自分でできることを人にやらせたら非効率的だろ
ジャミル・バイパー
グッ……
 こう正論を返されては反論の仕様がない

た、確かにそうだが…………何もしなくていいはちょっと違うだろ
カリム
今まで忙しかったんだからお前もゆっくりしろ
部屋にあるひとつの椅子をクイッと顎でさし、座るよう促す
ジャミル・バイパー
……分かった、朝食置いとくぞ
プレートを近くにあるテーブルに置き、カリムに促された通りに椅子に座る

そして一息ついた




いや、つけるわけがない

今までこのご主人様のお世話に明け暮れた日々だったが、今ではなんでも1人でこなせるということが分かり自分は何もしなくていいという状況
何年も忙しい日々を送っていたジャミルには歯がゆかった




暇だ………もう何かしないと落ち着かない←もはや病

カリムの世話をずっとしてたが…
……もうする必要はないと言うし…………


なぜだ、色々手伝ってお前に認められたかったのに

実力を見せたかったのに

お前の役に立ちたいのに

あわよくば着替えまた手伝いたかったのに←

その綺麗な赤い瞳に俺を映して欲しいのに

その声で俺の名を読んで欲しいのに

こんなにもお前の役に立ちたいと願っているのに

俺は頼られていないのか?

俺は、いらないのか?←なんか不穏な空気


心の中で叫び苦しむ
頭の中がぐちゃぐちゃとなってきた

もちろん、苦しんでいることにカリムは気づかない

1回、その主の後ろ姿を目に映しニタリと笑う



……ククク、まあいい

こうなったら





意地でもお前の世話をしてやる←

その黒い瞳の奥には、どこか黒い感情が見えた

もちろん、彼に背を向けただいま勉強中である主人はそんなこと知る由もない

こうしてリアリストで計算高い腹黒主人、どんな手段を使ってでも世話を焼きたいヤンデレ予備軍従者による、色んな意味でくだらn…ゴホン、どうでもいい戦いが始まったのである←



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