一通りお店を見て回り店内のベンチに座って
お喋りをひとしきり楽しんで、
お店を出たのは、四時ぐらいだった。
「案外、何度行ってても楽しいですね」
素直に先輩といるとあっという間だった。と
言えばいいのに変なところで素直になれない。
それが私の弱い箇所だ。
「結愛がいるから凄く楽しいよ」
どんどん歩いていく先輩を見ながら
少し不思議な気持ちになった。
先輩には絶対に追い付けない。
私がいくら大人ぶっても子供だから。
「...いつもありがとうございます」
小さく呟く。
すると先輩が急に振り返って笑ってみせた。
聞こえてしまったのかも、まぁいいか。
私は顔の温度を上がるのを感じながら
先輩に向かって走り出した。
もうすぐ春が来る。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。