第13話

麒麟夜話③告白
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2022/08/18 11:09




「いやぁ、驚いたわ。
聞いた最初は、射精せずにイくことなんてホンマにでけるんか?って思てたんよ?」


「感じるのも才能、なんですかね」


1番背の高い青年と背の低い青年が、静かに食事をしていた。
ここは街中の居酒屋。
食事もできるので、呑む人ばかりではなく、女性や子供の姿もあった。
ふたりは店の隅、少し奥まったふたりがけの席に座っていた。


「僕、気付いたんですけど。
彼が快がって、気を失うほど疲れ果てても、最後に麒麟のヤツが中に出すと、ちゃんと回復するじゃないですか。
エネルギーが染み込むのにひと晩かかるからとか言っても、翌朝にはツヤツヤのピカピカになってますよね。
ひょっとしたら、あれ、麒麟がやってやれば、いくら出して疲れても構わないんじゃない?」


「あ、ボクもそれ、ちょっと思ったわ」


「結果的には、彼の快感が爆発的に増したみたいだからいいんだけど、ちょっとモヤるっていうか……」


「麒麟くんな。
彼が、イきたい、もうイかせて、って泣くのに、イっていいんだよ、いくらでもイきなよっていいながら、優しく微笑んでキスして、でも爆ぜるのは許さなかったやんか?
毎回あれにはさすがに参ったわ。
許してやらんのか、て(笑)
でもそれで、出さずにイけるようになるんやからなぁ」


呑んでた蜂蜜酒のグラスごしに背高くんを眺める黒目がちの瞳が光った。


「羨ましい?」


「え?」


「あなたが代わりたいのは麒麟くんの方?
それとも彼の方ですか?」


「いや///
ボクはどっちでもないねん。
ただ時々……ボクでなきゃダメだ、って思ってもらいたいような」


「全員、あなたは、あなたじゃなきゃダメだって思ってますよ?」


「それはそや、わかっとる。
わかったうえで、なんや、ボクだけ、でおってほしいみたいな、な?
みんな均等に、やのうて……」


目の前の、黒目がちの瞳が伏せられた。
それに気付いて、背の高い青年が、傷付けたかとあわてる。


「あんな、ボクが選ばれたんはちゃんとわかってんねん。
彼はボクだから、欲しいって思ってくれたんや、て。
ただ、麒麟くんに独占欲はー?て聞かれて、そういやそうやな、て、気付いてもうたんや。
ボクは、彼が大好きや。
彼の気持ちに嘘が無いのもわかるけど、ボクだけ、では無いのが……キツくなる時が来そうやな、て……。
決して、キミと分かちおうんがイヤとかではないよ?」


「僕は……いつからだろ?
……彼の体に残るあなたの痕跡を探して、彼を愛するようになってる」


「は?」


「最初に気付いたのは、彼の左の乳首が、明らかに腫れてた時。
心臓の上にあるそこを、たくさん愛撫されたんだな、って。
その次が、脚の付け根に散ったキスマークで、たくさん口で可愛がったのが想像できて。
また別の時は、明らかに後ろが柔らかく解れてて……。
なんか、それからは、彼を抱きながら、あなたがどんな風に彼を可愛がってるのか考えてしまう……最近じゃ、彼を抱くたびにあなたのことを……あなたのことばかりを考えてしまうんですよね」


「え!」


「僕、良くわかんなくなってるんですよ。
自分が彼に興奮してるのか、あなたに欲情してるのか」


「そんな……?
そんなこと……」


「だから僕、あなたとしてみたい」


きれいな目が、真っ直ぐ、背の高い青年の視線を射た。
青年は、店内のざわめきも聞かず、息をするのさえ忘れて、目の前のきれいな目を見つめた。









はぁはぁはぁ。


「……どや?」


「……はい……」


「彼を抱くようにやってくれ、ゆうから……でも、体は人によって違うんやし」


「優しくしつこいの、すごく快かったです。
あとキス。
うっとりしました」


「でもあんま快くなかったんやないか?
1度しか爆ぜてないやんか」


「いやこれは……やってもらうのに慣れてないだけで。
あと、僕たち、これで終わりじゃないですから」


「終わりじゃない?」


「僕、やってもらって、ハッキリわかりました。
僕、彼を抱きながらずっと、あなたを抱いてたんだって。
だから、次は僕の番です」


「え?
ちょ、待って?」


「ダメです、こんな可愛いあなたを知っちゃったのに」


「???」


「抱かれるのは僕にだけにしてね?
麒麟にもやられちゃダメですよ?」


「いや、そんな、ダメってダメや」


「あなたは今日から僕のもの」


ちゅーっ。


「待てや、何が起きてるんや?!?」














「なぁなぁ」


「?わがきみ、どしたの?」


「あいつら、午後からずっと見ないけど、どこ行ったの?」


「あ、ふたりは今日は午後から休み。
なんか、ふたりで話したいことがあるからって、ちょうちょのきみが言ってたよー」


「休みぃ?
じゃーオレもぉ」


「あなたはダメ。
えらくなると、山ほど書類仕事が増えるんで、今のうちに文字覚えなきゃ」


「いんだよ、そんなの、得意なヤツにやらせれば」


じっ。


「な、なんだよ?(怒られるかと思ってびくびく)」


ちゅーっ。


「(プハッ、はぁはぁ)なにすんだよッ!」


「はー、可愛い。
わがきみったら。
ほんとに可愛いったらありゃしない」


「///ヤメロって。
そんな、いつでもサカってるわけにはいかないんだからさぁ」


「うん、それはほんとにそぉ。
たださあ、この世に生まれたありとあらゆるものにとって、生殖行動は、神様が与えたプログラミングだから、無視はできないのよ。
道に咲く花も、空を飛ぶ鳥も、あらゆるものが、他者と交わりたいって思うように作られてんだもん」


「オマエもそーなの?」


「ん?」


「オマエも、ほんとはメス探しに行きたいのかな、って」


じっ。


「な、なんだよ?(突然のキスを警戒してびくついて)」


「俺はもうあなたのものだから、基本はあなたとしか番いたくない。
ただ、あなたの世界に生きてる人たちは、あなたと同じだから」


「どーゆー理論だよ、わかんねー(むう)」


「あなたの周りのみんなが幸せになるように俺がいるってこと」


「その割に、オマエ、他のとこに行かないじゃん。
その、///オレが他の人とエッチする夜以外はさ」


「だって俺、わがきみと50メートル以上離れたくないもん」


「もっと草原走ったりとかさ、したくねーの?」


「(ちょっと考えて)したくない。
なんでそんな疲れることしたいって思うの?」


「や、犬とかさ、散歩したいもんかな、って」


「犬じゃないもん」


抱きっ。


「人間っていいよね。
両腕あるから抱きしめられるもん」


「(素直に抱きしめられたまま)……メス探したくなったら、ちゃんと言ってけよ?」


「ん?」


「いきなりいなくなったら、その、サビシーからさ」


「わがきみ……(深く長くキスし)」


「んっ…ふ……」


「(唇を離してからささやくように)……俺は一生そばにいるし、あなたがいるからメスはいらないんだよ?」


「/// オマ、何また大っきくしてんだよッ」


「あなたにちゃんとキスするとこーなっちゃうって言ったでしょっ!!」

















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