「罰ゲームってゆうても、ボク、さっき1回出しちゃったから、続けてはようやれん」
「俺も。
すぐ2回戦はムリ」
「僕はまだ平気。
あと2回はできる」
べそをかいて怯えた顔で3人を見上げてるリーダーを見下ろし、誰からやるか、じゃんけんで順番を決めようとしていた。
だが、ふたりは早くも戦線離脱を宣言。
「じゃっ、ここはボクの独り勝ちってことでいいですね?
今から独占させてもらいます!
あとからモンクは無しですから!」
言いながら嬉しそうに頬を紅潮させ、リーダーの横に行って、早速始めようとする。
「えっ、ちょっと待って?
オレだって今出したばっか……」
焦った声を出すリーダーの頭を撫でて、離脱宣言したひとりが、にこにこと言い聞かせる。
「しょーがないでしょー?
負けたら罰ゲームは俺たちのルールなんだから。
黙って言うこときいてくださいねー」
「せや、いっぱい気持ちぃくさせてもらい?」
ふたりの言葉を合図のように、リーダーの身体をまさぐり始める勝者。
「……あっ、ダメ、やめて?
待って?
ふたりとも、助け……ああーっ、あんあーっ」
「……ボクら、自販機でも行こか?」
「もっかいお風呂でもいいよねー、なんか汗かいたし」
戦いから離脱したふたりは、黙って部屋を出て行く。
後ろからは既に地震発動の気配。
「しっかしタフやなぁ、まだあと2回やて」
缶コーヒーブラックを美味しそうに飲みながら、心底感心したようす。
もう片方の青年は、手の中のカフェラテに目を落とす。
「俺は、男としては、ちょっとうらやましいかも」
「ええんよ。
ボクらは、量より質や(笑)」
「量より質、って(笑)」
ふたり、目を合わせて笑い合う。
「でもこれでようやくやな」
「ほんとほんと。
お互い好き合ってんのに、いつまでも進展しないから気を揉んだー」
「これがキッカケになって付き合うようになったらええな」
「こればっかりはわかんないからねー。
やってみたら違ったーってコトあるし」
「やってみたら、これや!ってわかることもあるやん」
その言葉に目を見開いて一瞬黙り、ふわっと頬を染めて下を向く。
「もう……!
スケベ!」
「男はみんなスケベなんや。
天使なんはおまえだけやで」
「おっ、俺だって健康な成人男子だもん!」
「わかったわかった、そうやなー、友達の為にこんな作戦考えつくぐらいやもんなー。
ほんま良かったわ、成人で。
じゃなきゃボク犯罪者や」
「アホ!
イケズ!」
「怒んなや(笑)」
手を伸ばして滑らかな頬に触れ、愛しそうに撫でる。
まなざしは深く優しい。
「好きやで」
「……うん」
恥ずかしそうに笑って、
「それより、どのくらいで戻る?」
話題を変える。
「そうやなぁ、1時間か?
2時間は無いやろ」
「じゃ、やっぱもっかいお風呂行こ!」
「人いなくても歌ったらあかんで?」
「もぉ、やんないって」
二人立ち上がって飲み終わった缶を片付け、仲良く手をつないで歩いて行く。
日付けが変わる頃戻ったふたりが見たのは、くっついたまま、幸せそうに眠り込んだ勝者と敗者の姿だった。
散乱するティッシュとこもった栗花の匂いに、目を見交わし、黙って薄く窓を開けた。
ティッシュを集めてゴミ箱に捨て、自分たちの布団をふたりからできるだけ離して別々に横たわる。
しばらくして、
「なぁ?」
片方が布団を持ち上げて、ささやくようにそっと声をかける。
「こっち来いや?」
声をかけられた方は、黙って隣の布団に潜り込む。
どちらからともなく体に腕を回し足を絡め合って……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。