第7話

大人の30分チャレンジ 後編
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2021/09/01 01:49





「罰ゲームってゆうても、ボク、さっき1回出しちゃったから、続けてはようやれん」


「俺も。
すぐ2回戦はムリ」


「僕はまだ平気。
あと2回はできる」


べそをかいて怯えた顔で3人を見上げてるリーダーを見下ろし、誰からやるか、じゃんけんで順番を決めようとしていた。
だが、ふたりは早くも戦線離脱を宣言。


「じゃっ、ここはボクの独り勝ちってことでいいですね?
今から独占させてもらいます!
あとからモンクは無しですから!」


言いながら嬉しそうに頬を紅潮させ、リーダーの横に行って、早速始めようとする。


「えっ、ちょっと待って?
オレだって今出したばっか……」


焦った声を出すリーダーの頭を撫でて、離脱宣言したひとりが、にこにこと言い聞かせる。


「しょーがないでしょー?
負けたら罰ゲームは俺たちのルールなんだから。
黙って言うこときいてくださいねー」


「せや、いっぱい気持ちぃくさせてもらい?」


ふたりの言葉を合図のように、リーダーの身体をまさぐり始める勝者。


「……あっ、ダメ、やめて?
待って?
ふたりとも、助け……ああーっ、あんあーっ」


「……ボクら、自販機でも行こか?」
「もっかいお風呂でもいいよねー、なんか汗かいたし」


戦いから離脱したふたりは、黙って部屋を出て行く。
後ろからは既に地震発動の気配。








「しっかしタフやなぁ、まだあと2回やて」


缶コーヒーブラックを美味しそうに飲みながら、心底感心したようす。
もう片方の青年は、手の中のカフェラテに目を落とす。


「俺は、男としては、ちょっとうらやましいかも」


「ええんよ。
ボクらは、量より質や(笑)」


「量より質、って(笑)」


ふたり、目を合わせて笑い合う。


「でもこれでようやくやな」


「ほんとほんと。
お互い好き合ってんのに、いつまでも進展しないから気を揉んだー」


「これがキッカケになって付き合うようになったらええな」


「こればっかりはわかんないからねー。
やってみたら違ったーってコトあるし」


「やってみたら、これや!ってわかることもあるやん」


その言葉に目を見開いて一瞬黙り、ふわっと頬を染めて下を向く。


「もう……!
スケベ!」


「男はみんなスケベなんや。
天使なんはおまえだけやで」


「おっ、俺だって健康な成人男子だもん!」


「わかったわかった、そうやなー、友達の為にこんな作戦考えつくぐらいやもんなー。
ほんま良かったわ、成人で。
じゃなきゃボク犯罪者や」


「アホ!
イケズ!」


「怒んなや(笑)」


手を伸ばして滑らかな頬に触れ、愛しそうに撫でる。
まなざしは深く優しい。


「好きやで」


「……うん」


恥ずかしそうに笑って、


「それより、どのくらいで戻る?」


話題を変える。


「そうやなぁ、1時間か?
2時間は無いやろ」


「じゃ、やっぱもっかいお風呂行こ!」


「人いなくても歌ったらあかんで?」


「もぉ、やんないって」


二人立ち上がって飲み終わった缶を片付け、仲良く手をつないで歩いて行く。







日付けが変わる頃戻ったふたりが見たのは、くっついたまま、幸せそうに眠り込んだ勝者と敗者の姿だった。

散乱するティッシュとこもった栗花の匂いに、目を見交わし、黙って薄く窓を開けた。

ティッシュを集めてゴミ箱に捨て、自分たちの布団をふたりからできるだけ離して別々に横たわる。
しばらくして、


「なぁ?」


片方が布団を持ち上げて、ささやくようにそっと声をかける。


「こっち来いや?」


声をかけられた方は、黙って隣の布団に潜り込む。
どちらからともなく体に腕を回し足を絡め合って……。













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