君は愛を知らない。
優しいその温もりだって……
いつもの様にため息を着く私。
今の様に、静かにピアノを弾く。
これが、私の心の支え。
ベートーベンの『喜びの歌』
この曲を聴くと、心が落ち着く。
友達など要らない。
私には、ピアノがあれば充分。
お願い、誰も来ないで。
一人でいさせて。
なのに………
イライラしながらピアノを弾く手を止める。
いちいちうるさい。
話掛けないで。
ピアノを弾く手を早くする。
心に響くこの音。
私が大好きな音、落ち着く音。
そう言って、席を立つ。
そう言われて私は即答した。
逃げるように靴箱に行った。
黒迫君だ。
同じクラスで、中学の時から同じ学校。
中学の時、黒迫は凄く虐められていた。
そう言って、逃げようとしたその時……
手首を掴まれた。
彼の手には、赤いお守りがあった。
そのお守りは、小さい頃男の子に貰った物だ。
何時しか私は、そのお守りが宝物になっていた。
そう言って彼は立ち去る。
私は、掴まれた手首をずっと見詰めていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。