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第1話

プロローグ
34
2019/03/13 09:48
君は愛を知らない。
優しいその温もりだって……
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
はぁ~
いつもの様にため息を着く私。
今の様に、静かにピアノを弾く。
これが、私の心の支え。
ベートーベンの『喜びの歌』
この曲を聴くと、心が落ち着く。
友達など要らない。
私には、ピアノがあれば充分。
お願い、誰も来ないで。
一人でいさせて。
なのに………
島本 愛梨
島本 愛梨
綾瀬さん。
こんな遅くまで残ってなにしてんの?
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
島本……
イライラしながらピアノを弾く手を止める。
島本 愛梨
島本 愛梨
それにしても、ピアノ上手なのね。
いちいちうるさい。
話掛けないで。
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
上手だと思うなら、黙って聴いて。
島本が喋ると弾けない。
島本 愛梨
島本 愛梨
……分かった
ピアノを弾く手を早くする。
心に響くこの音。
私が大好きな音、落ち着く音。
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
私、ピアノのレッスンがある。
そう言って、席を立つ。
島本 愛梨
島本 愛梨
一緒に帰ろ
そう言われて私は即答した。
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
急いでるから
逃げるように靴箱に行った。
黒迫 駿
黒迫 駿
あ、綾瀬
黒迫君だ。
同じクラスで、中学の時から同じ学校。
中学の時、黒迫は凄く虐められていた。
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
黒迫。
こんばんわ。
そう言って、逃げようとしたその時……
手首を掴まれた。
黒迫 駿
黒迫 駿
これ、
彼の手には、赤いお守りがあった。
そのお守りは、小さい頃男の子に貰った物だ。
綾瀬  梨花
綾瀬 梨花
ありがと。
何時しか私は、そのお守りが宝物になっていた。
黒迫 駿
黒迫 駿
じゃあ
そう言って彼は立ち去る。
私は、掴まれた手首をずっと見詰めていた。

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