まふが帰った後の教室
「〜だからな!忘れんなよー」
先生が何かの連絡をしていても
絢香が何か話していても
96ちゃんが必死に私の名前を呼んでいても
さっきのまふの顔との会話が頭の中で何回も再生される
なんか騒がしいな〜とか思ったけど
ぶっちゃけ学校の後のまふの収録が楽しみすぎて耳に入ってなかった
「そこの女子うるさいぞー」
「げってなんだ、げって!」
「神崎ー目逸らすなー」
「黒木、佐々木もだからなー、笑ってるけど」
「はあ〜?まあ静かにしろ」
そんな会話も1ミリも耳に入っていなかった訳で
ていうか学年集会とか聞く気にならなかった訳で
「おい!一ノ瀬!」
「はあ...ちゃんと聞けよー」
「学年集会終わるぞー教室戻れー」
そんなことを言うぐらい絢香と2人が仲良くなったことに喜びつつ
やっぱりまふの収録のことを考えていて
周りの状況すら分かっていなかった
騒がしいとさえ思わなかった
“今日”がなんの日かも忘れて
「え?!生徒会長?!」
息を切らして1年生の間を走って来たお兄ちゃん
私の手を掴んでお兄ちゃんが歩き出して
声を掛ける2人には目もくれず
その時からだったのかな
私の幸せが音を立てて崩れて行くような気がした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。