春菜さんの言葉が理解出来なくて
あたかも当たり前のことを言っているように首を傾げる
元から突拍子もないことを言う人だけど今回は
そうだよ、あなたにはまふがいるんだよ
一瞬、考えてしまった。まふじゃなくて俺の方を見てくれるあなたの姿を
頼むからやめてくれ、望んでしまうから
俺の隣にあなたがずっといてくれる、そんなことを
ダメなんだ、俺が言わないと、あなたには彼氏がいるって
だって、俺は知ってるから
春菜さんの言うことにあなたが逆らえたことがないことぐらい
俺が言わなきゃ春菜さんが止まらないことを知ってる
あなたが嫌がっていることが分かったのか俺にそう言う
あなたが助けを求めていることも分かってる
でも、でも
俺は最低な兄になるのかもしれない
それでも
この笑顔があなたの目にどう写ったかは知らない
ただ今決めたのは
まふには渡さない
それだけ
一応あなたが何か言えば変えられる
そういう風に答えて
あなたが春菜さんの前で「嫌」という場面を初めて見た
自分で意見を言おうとするほど
まふのことが好きなんだと知って
春菜さんの顔がとても心配そうなものに変わる
完全に春菜さんのペース
俺は妹の幸せよりも
自分の幸せを選んで
逃げ道を奪っていく春菜さんを止めようともしなかった
それでも、もう決めたんだ
まふじゃなくて俺を見てもらうって
あなた、ごめんな
最低な“お兄ちゃん”で
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。