お兄ちゃん...なんであんなこと...
すぐ側にいないまふに助けを求めても
((ガチャ
「春菜ーいるかー?」
お父さんが来る度に目を輝かせるお母さんはとてもキラキラしていて
私とお兄ちゃんの間の雰囲気にはそぐわなかった
いつもの優しい笑顔、その笑顔が不安を煽る
聞こうとしたことは分かってくれた、それなのに
望んでいた答えとは違って
「冗談だよ」そう言って欲しかった
義理とはいえ、私達は家族なのに
「あ、そうなのか?」
「そうか、それは良かった」
そんな会話が廊下から聞こえてきて
お父さんも賛成していて最後の希望を失ったような気がした
実際に希望は無くなったのだ
「2人とも久しぶりだな」
お父さんも目の前の椅子に座って
「2人とも春菜から聞いたな?」
いきなりその話題を振られて困惑しながらどうすれば
その事だけを考えていた
「実はな...」
お父さんが何か話しだして
全員が黙るまでは
会社関連の話をする時は喋ってはいけない
我が家の数少ないルールのひとつだ
「父さん、外国に行くんだ」
驚きはしなかった
お父さんは社長でバリバリに働いているし
有名な会社だから海外進出もおかしくはない
「それでだな、日本の会社を...」
「そらるに任せていきたいんだ」
さすがのお兄ちゃんでもそこまでは予想できていなかったらしい
「何か文句か?そらる?」
でもルールを破ったことに変わりはない
そう考えたのかすぐさまお父さんがお兄ちゃんを睨む
お兄ちゃんが弁解して
私はどうにかさっきのことを考え直してもらおうと考えていて
お母さんはずっと笑ったまま
「...そうか、じゃあ続きだ」
お父さんは落ち着いていた
食卓は異様な空気で包まれたまま
「だからな、2人にあの話をしたんだ」
私は
そう思っていても言えるはずもなく
お父さんの話が進んで行くのを黙って聞いているしかなかった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。