第61話

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2023/05/29 08:00
じゃあね、と言って席を立つ阿部先輩。

何がなんだかよく分からないけど、
とりあえず私は先輩にお礼を言った。

先輩は私に微笑んでから
入り口の方へ向かって歩く。

そして、蓮も先輩に頭を下げた。

それに先輩はポンッと蓮の肩を軽くたたいた。



蓮「待たせたな」



それからすぐ蓮は私のいる席に来た。

そしてぶっきらぼうにドサッと隣に座った。



『怪我、大丈夫なの?』



ある程度血は拭ってあったりしているから
喧嘩したまま来たって訳ではなさそう。

だけど、心配だった。

あの後どうなったのか、傷は平気なのか。



蓮「あぁ。これくらい大丈夫だ」


『そっか』


蓮「時間あるか?」


『時間?全然あるけど』


蓮「お前に話したいことがある。」


『話…?』



なんだろう。話って。

不思議に思っていると蓮は立ち上がった。

そして、阿部先輩にもらったお金を握って
もう片方の手では私の手を引く。



『え、でるの?』


蓮「うん、それ飲みきる?」


『あ、うん』



それ、と蓮はオレンジジュースを指差す。

もったいないし、美味しいから
私は慌てて飲み干した。

それを見て蓮は少し笑ってた。



蓮「行くぞ」


『うん』



手を引かれるままに蓮について行く。

店をでる前に蓮はレジで
お金を払ってお釣りをポケットに突っ込んだ。

それから数分歩いたところにある公園を
見つけて、蓮は何の迷いもなく入っていく。

だから、未だ手を引っ張られてる私も入った。



蓮「まず、悪かった」


『え?』



誰もいない公園のベンチに座ってから
蓮はこっちを向いてそう頭を下げてきた。

突然のことで驚いて、私は目をパチパチさせる。



蓮「喧嘩、巻き込んだ。
怖い思いさせちまっただろ?」


『あ、それね』


蓮「あいつらさ、この前喧嘩で
俺に負けた奴らなんだよ。
つっても一部のやつらなんだけど。」


『うん』


蓮「それで仕返しくらったり
その仕返ししたりしてたらこうなった」


『そっか』



たぶん、あの時学校のカフェテリアの外で
みた人たちもあの男たちの仲間なんだろう。


私と蓮が一緒にいるのを見かけて
誰かが付き合ってるって勘違いした。

だから私が捕らわれたって訳。

そして蓮の元に奴らから連絡が来て
駆けつけてきた。

と、それから蓮は教えてくれた。



蓮「何もされてない?」


『え?私?』


蓮「手出されてないか?」


『うん、全然平気』


蓮「そっか」


『うん』


蓮「あのさ、こっからかなり
大事な話するからよく聞けよ?」



蓮はそう言って瞳を据えた。

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