あの後はグクと一緒に病院を出て家路を歩いた
けど、まだ頭の中をあの時の記憶がぐるぐる渦巻く
不安と恐怖で自然とおぼつかない足取りになる
そんな私を見たグクは私の目の前で背を向けて屈んだ
仕方なくおぶられることにした
大好きな甘い匂いに包まれたかったし……
目が覚めた時に見たグクの表情が蘇る
見たことがないぐらい、辛そうで………
グクに迷惑はかけたくないから
多分、焦げ茶みたいな色の封筒なら大丈夫
けど……よく輸送とかするようなあの薄い茶色の封筒だけはダメ
グクはだいぶケーキへの恐怖心なくなったらしいけど
何の変哲もない会話なのかもしれない
けど今は……グクの優しさが溢れてる会話だった
未だにフラバが離れない私から不安をなくそうとしてくれてる
いつも通りの日常だよって、遠回しに言ってくれてる
そんなグクに感謝でいっぱいになって……
それと同時に申し訳なくもなった
また溢れてきた涙がバレないように拭って
グクを思い切り抱き締める
呆れた溜め息をつきながらも、
グクはどこか楽しそうに笑って言った
また、頬に涙が伝った
本当に…グクって人は私の心を掴んで離さない
そんなこと言われたら、嘘でももっと好きになる
夕暮れの空に、幸せの声色が溶けていった
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。