唇が重なった途端に前のように心臓に痛みがはしる
でも、前回より物凄く痛い
顔を歪めながらも重ね続ける
何度も何度も角度を変えて重ね合わせれば
次第に痛みは薄れて、やがてなくなった
それと同時にサッと唇を離す
グクの方を見ないように下を向いて息を整える
何秒経ってもグクが叫ぶことはなく、救えたことを実感する
安心して涙が溢れてくる
良かった……私、グクを救えたんだ
次から次へと溢れる涙を拭いながらグクの上から退く
またソファの端に行こうとすれば、
グラッと視界が揺れてグクの方に倒れる
慌てて退こうとするけど視界がグラグラして動けない
ここへ来て、限界が来たみたいだ
でも、このままじゃグクが嫌な思いし続ける
だから早く……早く退かなきゃいけないのに
グクの匂いに安心して体が動かない
ダメ、動いて……お願い
何とかもがくけど何も変わらない
このままじゃ怒られる
そう焦った時だった
next
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!