おまじないは、夢を見せた。
この夢も効果なのだろうかと、それを続けること1週間。
もちろん、夢を見ない日もあった。しかし、見る夢はいつもキスの手前。
彼女が恥ずかしそうな顔をこちらに向けて終わる。
…今日もそうだったのだ。
いつもの様に寝坊をして、母に急かされ、バタバタと家を出る。
ようやくついた学校は、チャイムがなり終わるギリギリ手前だった。
友人の絡みを流しながら、自分の席に着く。
チャイムは既になり終わっているが、担任はまだ来ない。
それをいい事に、僕の机に腰掛ける。
唐突に始めた話に僕はリュックを漁っていた手を止めて、友人の話を聞く。
ニヤニヤとしながらこちらを見て話す。この友人は、僕の気持ちを知っているのだ。
しかし、この1週間お互い忙しく、一緒には帰っていないので彼女に変化があったかどうか分からない
そう言われると、確かに変だ。
今まで一緒に帰るという合図は、どちらかが、お互いクラスの前で待って、暫く出てこなかったら、帰らない。別に連絡も今までしていなかった。
…ふと、女子がしていた噂を思い出した。
ー相手と、何かが起こるんだってー
もしかして。もしかするのだろうか。
バシッと頭を叩かれた瞬間、担任が扉を開ける音がする。
「やっべ」と慌てて机から降り、友人は自分の席へも帰っていく。
頭を叩かれた後も、僕の顔は口角が上がっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。