ジェノと別れてから
電車に乗り、昨日の場所まで向かう。
ふと時計を確認すればもう3時半近く。
お昼を食べた時間が遅かったな ....... 。
今日が何月何日で何曜日なのかも一応確認する 。
毎日仕事してると曜日感覚なくなってくる .......
土曜 、 か .......
はっ、明日休みじゃん !!!
こんないい事あります ?!
ここ3日間歩き続けたから
休みが神からのめぐみのように感じる 。
まぁ 、 いい 。
とりあえずは目の前にある
難関をクリアしなくては ....... 。
電車が目的の駅に止まる 。
電車から降りて改札を通り 、
迷いなく昨日の花屋まで足を進める 。
その花屋について外見をもう一度しっかり 、
明るい時間帯に見れば分かるのは 、
小人のお家のように可愛らしいお店で
尚且つオシャレだということ 。
素敵だな ....... 。
そう感激しているとハッとする 。
こんなことしている場合ではなかった 。
善は急げ 、当たって砕けろ 。
砕けては欲しくないけど .......
チャリン 、と鈴の音を鳴らしてお店の扉を開ける 。
「 いらっしゃいませ ....... って 、昨日の ....... ? 」
『 ぁ、はい!そうです! 』
「 わざわざありがとうございます 。 」
『 い、いえ ! 』
「 お話があるんでしたよね 。 こちらに 、 どうぞ 」
そう言ってその店員さんは奥の方を指しながら
お店の看板をCLOSEに変えてしまった 。
『 閉めてしまうんですか ?! 』
「 ? ....... あぁ 、 はい 。 滅多に人など来ませんし 、最近の御注文は大抵が電話なので 。 」
『 は 、 はぁ ....... 』
なんて近代的な.......
あぁ、そうだ。
自己紹介をしなければ。
『 えっと 、 ....... 私こういうものでして ! 』
そう言って私は彼に名刺を渡そうとする 。
けど 、緊張しているのか余りの名刺をバラバラと
床にばらまいてしまった。
『 す 、すみません ....... ! 』
「 いえ 、 ....... 」
私がせっせとその散らばった名刺を拾っていると 、
視界に少し焼けた色の手が映る 。
『 えっ 、 ....... 』
「 少しおちゃめなんですか ? 」
そういった彼の声に顔をあげれば
こちらを向いて微笑んでいる 。
軽率にも私はその笑顔にキュンとしてしまった 。
だって 、あまりにも儚く笑うから 。
「 はは 、冗談です 。 ....... はい 、拾い終わりましたよ 。
立ち話はどうかと思って奥の席に案内しようとしていたんです 。こちらにどうぞ ? 」
『 そっ 、 そうだったんです 、ね ....... ありがとうございます ....... 』
私がさほど面白かったのか
彼はまだ口元を緩ませながら
奥の席に移動をしていた 。
私もそれを追いかける。
少しダサい姿を見せてしまったけど 、
次こそ失敗してはならない 。
しっかりしなくては 。
お互いが席に着いてから 、
室内に緊張感が走ったように感じた 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。