前の話
一覧へ
次の話

第9話

再会。
146
2021/06/11 12:58
看護専門学校に行ってからなかなかあの廃病院に行くことは出来なかった


川上 由紀
川上 由紀
なかなか会いに来れなくなるかもしれない
ごめん
叶多
叶多
大丈夫!
頑張ってね!




6年後

私は医師免許を取って、久々に廃病院へとやってきた







懐かしいな…
川上 由紀
川上 由紀
叶多!
いる?
叶多
叶多
っ!
由紀!
久しぶりだね
私はカバンをごそごそさせながら賞状を取り出した
川上 由紀
川上 由紀
取れたよ!
医師免許資格
遅くなってごめんね…
叶多
叶多
……由紀。
ありがとう…
叶多の表情は暗かった
川上 由紀
川上 由紀
叶多?
どうしたの?
叶多
叶多
僕の夢…叶ったんだ…
由紀、ありがとう
ごめん。もう会うことは出来ない
…さよならだ



なんで?
川上 由紀
川上 由紀
どういうこと?
叶多
叶多
僕の夢は全部叶った
だからもう成仏しなきゃならないんだ
川上 由紀
川上 由紀
もう…
もう、会えないってこと?
叶多
叶多
うん
川上 由紀
川上 由紀
なんで?だめだよ!
立派な医者になるまでだめだよ!
叶多
叶多
ごめん。
でももう行かなきゃいけないんだ
……由紀、聞いて?
叶多はそう言うと私の頬に手を当てた
叶多
叶多
僕の分まで生きて。
生まれ変わったらすぐに会いに行くから待ってて

…僕がいなくなったらそこのベット横の一番上の引き出しを開けて。


話している間にも叶多の体が前よりも薄くなっている





川上 由紀
川上 由紀
待って!だめだってば!
勝手すぎるよっ!
叶多
叶多
ごめん
ああ、泣かないで由紀
また会えるから

……由紀…好きだよ




そう言うとキスをした。

瞬きすると叶多の姿は消えていた






ホント自分勝手すぎる…






私の返事も聞かないで…









川上 由紀
川上 由紀
私も…好きだよぉ






引き出しを開けると手紙と花が入っていた



手紙の紙…

私のルーズリーフのやつだ…




いつの間に…

















『由紀へ

僕がいなくなってまだ泣いてるんでしょ?
大丈夫だから、安心して


あの日、初めてあった日のこと覚えてる?


僕が月を見ていたら由紀が病室に来て、
来たかと思えば死んだら自由になれるの?とか聞いてきて。


僕の願いを聞いたら叶えてあげるって言ってくれて。


勉強がしたいって言ったら勉強道具持ってきてここまで来てくれて。


カップ麺が食べたいって言ったら大きな魔法瓶まで持って、僕に好きな方選んでいいよって言ってくれて。

屋台の食べのもが食べたいって言ったら沢山買ってきてくれて…
汗だくになりながら。

一緒に花火もやったね

僕が線香花火やろうとしたら

「まだダメっ!」って

真剣な顔で言ってきたっけ…



街で上がった大きな打ち上げ花火。



あとは、医者になりたいって夢…


それも叶えてくれたね。


僕のためにここまでしてくれた人は初めてだ


僕のためにありがとう。


でも、たった一つ願いがちょっと叶わなかったかな?…





川上 由紀
川上 由紀
え?






僕の願い。


”友達を作りたい”

その友達は途中から好きな人に変わった。



自分のことはどうでもよかった君は


僕のためには一生懸命になってくれて。





気づいたら……






好きになってた。




初めての事だったから


由紀が


「友達感覚としてだよ」って言ったけど


違うって分かった。



僕の初恋が由紀で良かった


僕は変わらず由紀を好きでいる


……本当にありがとう




叶多より』











一緒に置いてあったスミレの花





私はその花を持って自転車を押しながらと家に帰った。












「おかえりなさい、由紀。どうだった?今日だったでしょ、合格発表日」






川上 由紀
川上 由紀
合格した







「良かったじゃない!……由紀?なんで泣いているの?」







私はなんでもないと言い、自分の部屋に入った。



スミレの花を本に挟めた






突然の別れ


唐突すぎて頭がついてこない


でも



叶多の分まで生きないと……




次の日も廃病院に行ったが叶多はいなかった















それから五年後ー









私は小児科の病院に就いていた。



「先生、次の患者さんです。」




渡されたカルテには



”水森 叶多”と書いてあっていた。






懐かしいな…



叶多にもらったスミレの花はネームプレートに挟めてある





いつも一緒だよ


忘れないよ

という意味を込めて








川上 由紀
川上 由紀
次の方、どうぞー



入ってきた男の子は5歳くらいだった



そして、母親に


「ついて来なくて大丈夫」


と言っていた。




中間反抗期かな?





私の前の椅子に座りこちらを見た





左目の斜め下のホクロ…





叶多のホクロの位置と同じだ





叶多くんは笑って見せた。

















叶多
叶多
ごめん。遅くなった、由紀………

プリ小説オーディオドラマ