今日は3月17日。
麗が手術をする日の前日。
ソワソワした気持ちを抑えながら、お見舞いに行く準備をして、いつもの道を歩いた。
私の手には、前書いた麗宛の手紙が握りしめられている。
誤字脱字がないか、何度も何度も確認した。
これが、私から麗に伝えられるのは最後になるかもしれないから。
"コンコン"
前来た時と同じように、2回ノックをしてガラガラと扉を開ける。
それからはトランプをしたり学校であったことを私がひたすら話したり....
とにかくいろいろな事をした。
時間に無駄がないように、あれもこれもと次から次へと物を引っ張りだして遊んだ。
その理由は、私も彼女も分かっていた。
彼女にとって、私と過ごせる日は今日が最後かもしれないから______。
私にとっても、彼女と過ごせる日は今日が最後かもしれないから____。
そして、時計の針はちょうど11時を指した。
あと1時間くらいか.....
彼女が寂しそうに呟いた。
手紙のことをすっかり忘れていた。
私はカバンが置いてある所に行き、手紙を手にとって彼女に渡す。
満面の笑みで嬉しそうに彼女が言う。
ついうるっと来てしまい、涙が出そうになるのを堪えながら静かに言った。
遂に明日。
麗は笑っていたけれど.....
私は胸が押し潰されそうなくらい心配だった。苦しかった。
私はいつもの道を涙を流しながら歩いた_______。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。