第27話

26.
453
2020/05/30 04:46

今日は3月17日。





麗が手術をする日の前日。


ソワソワした気持ちを抑えながら、お見舞いに行く準備をして、いつもの道を歩いた。






私の手には、前書いた麗宛の手紙が握りしめられている。


誤字脱字がないか、何度も何度も確認した。



これが、私から麗に伝えられるのは最後になるかもしれないから。










"コンコン"







前来た時と同じように、2回ノックをしてガラガラと扉を開ける。



野々村 陽葵
野々村 陽葵
おはよっ
雨宮 麗
雨宮 麗
おはよー!!久しぶり〜!
野々村 陽葵
野々村 陽葵
久しぶり!
雨宮 麗
雨宮 麗
元気?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
私は全然元気だよ!麗は?どう?
雨宮 麗
雨宮 麗
私も大丈夫っ!
野々村 陽葵
野々村 陽葵
良かった!
雨宮 麗
雨宮 麗
今日はいつまで居れるの?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
お昼ごろくらいまでかなぁ
本当は一日中いたいくらいだけど
雨宮 麗
雨宮 麗
そっかぁ
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん
ごめんね💦
雨宮 麗
雨宮 麗
あ、全然大丈夫だよっ!
野々村 陽葵
野々村 陽葵
ありがと
雨宮 麗
雨宮 麗
じゃあ何かして遊ぼ〜
野々村 陽葵
野々村 陽葵
いいよ〜









それからはトランプをしたり学校であったことを私がひたすら話したり....



とにかくいろいろな事をした。





時間に無駄がないように、あれもこれもと次から次へと物を引っ張りだして遊んだ。






その理由は、私も彼女も分かっていた。








彼女にとって、私と過ごせる日は今日が最後かもしれないから______。


私にとっても、彼女と過ごせる日は今日が最後かもしれないから____。





そして、時計の針はちょうど11時を指した。


あと1時間くらいか.....




雨宮 麗
雨宮 麗
.....あと、1時間だね


彼女が寂しそうに呟いた。


野々村 陽葵
野々村 陽葵
そうだね.....
野々村 陽葵
野々村 陽葵
あっ!
雨宮 麗
雨宮 麗
野々村 陽葵
野々村 陽葵
えっとね...麗に渡したい物があるんだ〜
雨宮 麗
雨宮 麗
なになに?


手紙のことをすっかり忘れていた。


私はカバンが置いてある所に行き、手紙を手にとって彼女に渡す。


野々村 陽葵
野々村 陽葵
はい
雨宮 麗
雨宮 麗
手紙...?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん
雨宮 麗
雨宮 麗
.....ありがと!


満面の笑みで嬉しそうに彼女が言う。





雨宮 麗
雨宮 麗
陽葵が帰ってから、1人で読むね
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん
雨宮 麗
雨宮 麗
何回も読み直すから笑
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん笑
雨宮 麗
雨宮 麗
あ、あとね、明日私の手術が終わったらお母さんに陽葵の家に電話掛けとくように言ってあるから。
野々村 陽葵
野々村 陽葵
そうなんだ
野々村 陽葵
野々村 陽葵
何時くらいに終わるの?
雨宮 麗
雨宮 麗
う〜ん...それは分からないんだよねぇ
10時から始まるから.....夕方には終わると思うよ
野々村 陽葵
野々村 陽葵
そっか.....
雨宮 麗
雨宮 麗
うん
でも私は大丈夫だから
雨宮 麗
雨宮 麗
私は十分、楽しかったから
だから心配しないで?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん.....



ついうるっと来てしまい、涙が出そうになるのを堪えながら静かに言った。





野々村 陽葵
野々村 陽葵
ふぅ....
じゃあ、私そろそろ帰るね....
雨宮 麗
雨宮 麗
うん
また明日!
野々村 陽葵
野々村 陽葵
うん!明日8時くらいには来るから!
雨宮 麗
雨宮 麗
は〜い!!











遂に明日。


麗は笑っていたけれど.....


私は胸が押し潰されそうなくらい心配だった。苦しかった。




私はいつもの道を涙を流しながら歩いた_______。

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