第10話

9.
549
2020/04/03 07:54
強い風がふいた余韻のように、今度は優しい風がさらさらとふく。









......それでも彼女は、胸に手をあてたままだった。




野々村 陽葵
野々村 陽葵
.......麗?


恐る恐る聞くと、彼女はそっと目を開ける。


雨宮 麗
雨宮 麗
ん?何?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
いや....どうしたのかなと思って
雨宮 麗
雨宮 麗
ん~なんかね、
雨宮 麗
雨宮 麗
こうやって手を当てて心音を聞くと生きてるなぁって思うの
雨宮 麗
雨宮 麗
私はまだ生きてるね笑


クスクスと笑いながら言っていた。


野々村 陽葵
野々村 陽葵
...........


私は何も言えずにいた。


なんと声を掛けたらいいか分からなかった。







また長い沈黙が続く。

麗と出会って少ししか経っていないからだろうか。

今の私は上手く会話を続けらないのだ。






気まづい空気が流れる中、呑気にお弁当を食べ続ける麗を他所よそに、私は必死に何を話せば良いか考えを巡らせていた。


しばらくしてからふと、こんなことを思い出す。


野々村 陽葵
野々村 陽葵
(そういえば私、麗に聞きたいことがあったんだ)


今まで忘れてしまっていたが、思い出すと気になって気になっていてもたってもいられなくなる。


意を決し、ポツリと彼女に聞いた。
野々村 陽葵
野々村 陽葵
.....あのさ
雨宮 麗
雨宮 麗
ん?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
紫帆とか凛にそのこと、言わなくていいの?
雨宮 麗
雨宮 麗
あ~病気のこと?
野々村 陽葵
野々村 陽葵
......うん
雨宮 麗
雨宮 麗
ん~....
あの二人には、言う予定はないかな
野々村 陽葵
野々村 陽葵
....なんで?
雨宮 麗
雨宮 麗
今の関係を壊しちゃいそうで、怖くて
雨宮 麗
雨宮 麗
変に気を使ってほしくないんだよね〜
野々村 陽葵
野々村 陽葵
そっか......
雨宮 麗
雨宮 麗
うん
雨宮 麗
雨宮 麗
まぁでも、言おうか考えた時もあったよもちろん
野々村 陽葵
野々村 陽葵
そうなの?
雨宮 麗
雨宮 麗
そりゃあね笑
雨宮 麗
雨宮 麗
でもいつになっても勇気がでなくてさ
雨宮 麗
雨宮 麗
まだ言えてないんだよねぇ
野々村 陽葵
野々村 陽葵
そうなんだね.....
雨宮 麗
雨宮 麗
うん
雨宮 麗
雨宮 麗
まぁ私が言わなきゃいけない時が来たら言うよ、きっと
野々村 陽葵
野々村 陽葵
.....うん
野々村 陽葵
野々村 陽葵
分かった、ありがと
雨宮 麗
雨宮 麗
全然いいよ~



そう言って彼女はお弁当を片付け始めた。




それに続いて私も片付ける。




カチャカチャという音だけが私達の間で鳴る。






そんな中、彼女が声をあげた。


雨宮 麗
雨宮 麗
さぁて!日記でも書こうかな!









そう言って日記を手に取り、パラパラとページをめくる。














そんな彼女の横顔を、私は何も言えず無言で見つめていた。

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