強い風がふいた余韻のように、今度は優しい風がさらさらとふく。
......それでも彼女は、胸に手をあてたままだった。
恐る恐る聞くと、彼女はそっと目を開ける。
クスクスと笑いながら言っていた。
私は何も言えずにいた。
なんと声を掛けたらいいか分からなかった。
また長い沈黙が続く。
麗と出会って少ししか経っていないからだろうか。
今の私は上手く会話を続けらないのだ。
気まづい空気が流れる中、呑気にお弁当を食べ続ける麗を他所に、私は必死に何を話せば良いか考えを巡らせていた。
暫くしてからふと、こんなことを思い出す。
今まで忘れてしまっていたが、思い出すと気になって気になっていてもたってもいられなくなる。
意を決し、ポツリと彼女に聞いた。
そう言って彼女はお弁当を片付け始めた。
それに続いて私も片付ける。
カチャカチャという音だけが私達の間で鳴る。
そんな中、彼女が声をあげた。
そう言って日記を手に取り、パラパラとページをめくる。
そんな彼女の横顔を、私は何も言えず無言で見つめていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。