今日は3月18日。
麗が手術をする日だ。
とうとうこの日がやって来てしまったのである。
私はさっきから寂しい気持ちを抑えるのに必死だった。
必死に笑っていた。
彼女と過ごせるのが、今日で最後かもしれないから。
そして、遂に10時になってしまった。
看護師さんが麗を呼びにやってきた。
彼女は私の目を見て静かにそう言った。
そして、麗が立とうとしたその時、私は大声で叫んだ。
「ありがとう」
その言葉を彼女は力強く言った。
その一言は私の胸の奥にすっと染み込んだような気がした。
涙を堪えながら震える声でそう言った。
満面の笑みで彼女は答えた。
そして.....彼女は手術室へと運ばれ、私の目の前から消えていった。
心の中でずっとその言葉を唱えていた。
いつまでも、ずっと。
麗のお母さんに長い時間かかるから、と言われ、一旦家に帰ってきた。
まだソワソワした気持ちも、不安な気持ちも残っている。
だが、私も麗も希望を捨てていない。
いくら成功率が低い手術だからといって、私たちは諦めていなかった。
だから麗のお母さんから電話が掛かってくるのをひたすら待った。
心の中で祈りながら、何時間も、何時間も________
"プルプル"
もうすぐで4時になろうとしているその時、家に電話がかかってきた。
私はその音が聞こえた瞬間、バタバタと音を立てながら階段を降り、勢いよく受話器を手にした。
自然と声が強ばっていくのが自分でもよく分かった。
しばらくの沈黙が続いたあと、麗のお母さんは泣きながらこう言った。
麗のお母さんの涙は手術が成功したことによる嬉し涙なのか、それとも________
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。