そのまま私に背を向けてしまった叉萠
そのまま、
なにも言わずに歩き出した。
叉萠が此方を振り返る。
その冷酷な一言が、私に重くのし掛かる。
必死に何かを押し殺すような声で、
彼は言った。
なのに、
私の頭に過ったのは
…嘘
その一言だけだった。
何かまだ隠してる…
そんな、気がする…
乱暴に、叉萠に抱き寄せられた。
黒い笑みを浮かべると、
私が喋れなくなるぐらい、
自分の体に私の頭を押しつける
…痛い
少しその手を緩める叉萠。
誰かが見ていたら…なんて絶対考えてないよね…?
叉萠に抱き締められながら、
乱暴にその唇を押しつけられた私は、身動きをとることさえ出来ない。
そう言ってから、
もう一度優しく私にキスをすると、
叉萠は、行ってしまった。
まだ顔が火照っている。
そして、唇がジンジンと傷んだ。
私の呼ぶ声は、
四方八方から聞こえる、
ガヤの声に掻き消された。。。
Stay with me...
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!