第5話

晴れ
28
2018/03/25 17:57
その日は丘の上にいた。

見晴らしのいい丘だった。
サクラ
そういえば、カラスには苗字あるの?
少年
みょうじ?
サクラ
例えば、私が
逢坂咲良(おうさかさくら)
みたいなかんじだよ。
少年
無い…。
ずっとカラスだったから…。
サクラ
うーん。
私ネーミングセンスないからな…。
それじゃあ、沢の近くであったから…
逢沢は?
少年
あい、さわ…
サクラ
どう、かな…?
逢沢
逢沢…
俺もそんな名前で、
ずっと呼ばれたかったな。
カラスは嫌いだから。



サクラは立つ。
見ていないけど感じる。
そうやって訓練されたから。

視線の数、足音、衣服のこすれる音…
ひとつひとつを感じ取る。

できなければご飯なんてもらえない。

ムチで叩かれるのは痛くない。

でも、切られたり、焼かれたりするのは…
サクラ
逢沢くん、大丈夫?
逢沢
あっ、うん。
サクラ
きいても…いい?
逢沢
なにを?
サクラ
逢沢くんってどこから来たの?
逢沢
わからない。
ただ、山の死神って呼ばれてた。
サクラ
逢沢くんが?
逢沢
一族が、らしい…。
俺もよくわからない。
サクラ
そっか。
私はね!薬師の一族なんだ、
貴重だから国にも大切にされてるの。
サクラは振り返り告げる。
サクラ
でも薬師って
禁忌に触れるから短命なの。
逢沢
きんき?
サクラ
してはいけないことだよ。
お兄ちゃんは禁忌に触れた。
私が変わってあげたいな…
逢沢
この音…?
気づいたときには遅かった。

そうだ。このあと…


























































一瞬にも永遠にも感じられた。















サクラの身体が宙を舞う。










最後にサクラはなんて言ったか思い出した。








「逢沢くん。私の分も生きてね。
お兄ちゃんもよろしくね。」


























「ありがとう」














再び銃声が鳴り響く。


俺の肩に弾が貫通する。


そこで記憶は終わった。
神田先生
思い出したかい…?
現実に引き戻される。
神田先生
どこまで見れた?
俺は全てを話す。
神田先生
そっか…。思い出せたんだね。
逢沢
先生、俺の目は…?
なぜ今見えてるんですか?
神田先生
それが1つめの禁忌だよ。
僕がサクラの遺伝子を元に
作ったのがそれだ。
逢沢
1つめということは…?
先生は、一旦間をおいて続ける。
神田先生
2つ目。君の記憶の改ざんだよ。
逢沢
…え?
そこまでだ!
男がリビングに何人も何人も入ってくる。
神田咲夜!
お前を禁忌罪と少年の記憶の改ざんの疑いにより、召集所へ連れて行く。
逢沢
ちょ、ちょっとまってください!
先生は、
神田先生
私が全てやりました。
私が行きます。
召集所なんていったら、
二度と帰ってこれないのに…
逢沢
先生…
神田先生
僕はいいんだよ。
大丈夫だから。
君はサクラに言われた通り
「生きて」
逢沢
…はい、
おら。行くぞ。
先生は小さなメモを手渡した。

俺は無言で受け取る。
男達が出ていったあとに開けた。



中身は…

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