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第1話

プロローグ
44
2018/03/23 15:35
気がついたら俺はそこにいた。
少し硬いベッドから体を起こす。

隣にいた白服の男の人に声をかけられる。
ネームプレートからすると、
神田と言うやつらしい。
神田先生
逢沢くん。大丈夫?
頭を強く打ったんだって?
逢沢
大丈夫です。
俺の名前ですか?逢沢っていうのは。
そういうと、
神田先生は目に哀しみの色を浮かべた。
神田先生
ああ、そうだよ。
まさか、僕のことも覚えていない?
逢沢
ネームプレートを見れば
名前くらいわかりますよ。
神田先生
そうか。
じゃあ、改めて自己紹介しよう。
僕の名前は神田咲也。
読み方はカンダサクヤだよ。
読み方くらいわかるのに…。
窓の外を見るとそこは焼け野原だった。
逢沢
何かあったんですか?
神田先生
え?
薬品棚から薬瓶を取り出そうとしていた
手をすぐに止めて神田先生は振り返る。
逢沢
これ、何かありましたよね?
神田先生
ああ、外か…。
君にはまだ早いよ。
逢沢
「はやい」ってなんですか?
俺が尋ねると神田は言った。
神田先生
…じゃあ、教えるとするよ。
君はおそらく記憶喪失になったんだ。
逢沢
記憶喪失?
神田先生
そう、記憶喪失。
多分薬を飲まされたんだろうね。
副作用が見られる。鏡をみてごらん?
促されるままに鏡を見る。
黒い目に青い蝶の模様が浮かんでいる。
逢沢
先生、これって…?
神田先生
それが副作用だよ。
不思議とこの蝶が愛おしかった。
なんでかはわからないけれど。
逢沢
先生。
俺、生きたいです。
なんでこんな言葉が唐突に
出てきたかはわからない。
けれど、強く思った。



ふいに涙が流れてきた。
神田先生
逢沢くん大丈夫?
何か思い出したの?
逢沢
わからない…
わからないけど悲しいみたいなんだ。
俺は先生に頼んで睡眠薬を貰った。
体の力がスッと抜ける。
俺は力なくベッドに倒れると
そのまま意識を手放した。
神田先生
おやすみ、××…。

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