俺達の夏の大会、
そう、引退試合はもうすぐだった、
そんなのあなたが可愛すぎるからに決まってんだろ…
言えるわけがないけど。
夏季大会準決勝。
あなたと同い年の涼太、
1年にしてレギュラーでかっこいいし、
何も敵わないよ、ほんとに笑
俺は『好き』なんて感情は捨てて
3年間やってきた
でも、あなたに出会ったことで思いを隠せない自分がいた
涼太の方が嬉しいだろうけど、俺は優勝して
言えるだけのこと、あなたに言うよ、
そのはずだった
9回裏。2-1。ツーアウトランナーなし。
バッターは俺。
チームの運命は俺に託された。
誰の頭にも『ホームラン』という言葉しかないだろう、
やばい、緊張する…
スタンドから聞こえる、俺の大好きな声。
ありがとう、あなた。
緊張はほぐれた。
あとは打つだけ。
カキーン
響く快音。
いった、みんなそう思った
だけど、打球の先は
センターのグローブ。
試合は終了。
優勝どころか、決勝にも行けなかった
10年後。
あいつらの代が優勝したとか言う話は小耳に挟んだ。
やっぱ、そういうとこでできるやつって
涼太みたいな男なんだろうな…
野球からしばらく離れてたけど
またやってみるのもいいかな…
ドッキリとかじゃなくって、
『関口メンディー』というパフォーマーとしてじゃなくて
野球少年に戻った気分で。
ぼんやり考えながら歩いてた
ドンッ
肩がぶつかった
もうすぐ30歳の俺は、
今日、もう1度大好きな笑顔に出会った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。