第15話

服の行方 ハイセside
692
2021/02/16 00:05
その日の夜、僕は夕食を作りながら影嶺さんから聞いた話を思い返し、考えていた。
佐々木琲世
佐々木琲世
(異能者、か)
確かに、異能者が存在しないこの世界で彼女の話を聞いていれば、あまりにも非現実的且つファンタジー的で耳を貸さない人の方が大半だろう。けど、僕は実際に影嶺さん達が異能を使う場面を見てしまったので、信じざる終えない。
佐々木琲世
佐々木琲世
(仕込みとかにしたって、リアルだったしなあ)
異能には様々な種類があると言っていたが……異能者が喰種に手を貸せば確かに厄介なのに間違いない。捜査も手こずるだろう。
それを考えると、影嶺さん達の協力は必要かもしれない。彼女達も協力して欲しいみたいだし。
佐々木琲世
佐々木琲世
(そう言えば、あの敦君って子……孤児院育ちなんだ。異能が制御出来ず、暴走するけど記憶はなく……自分が異能者だとも知らなかった。区の災害指定猛獣にされ、賞金七十億を賭けられて色んな組織から追われて……だっけ?若いのに苦労してるなあ)
敦君は自分のせいで周りの人を危険な目に合わせてしまったと言っていたが、彼の気持ちも分からなくはない。僕も似たようなものだから。
佐々木琲世
佐々木琲世
(ある組織に入って……とか言ってたけど、それがちょくちょく会話にでてきた“武装探偵社”って組織なのかな。武装した探偵……?何するんだろう)
影嶺さんの話は非現実的だ。けど、本の中に書かれる物語の一つを現実で目にしている気分でもあり、正直話を聞いていてワクワクしている自分もいた。
佐々木琲世
佐々木琲世
(影嶺さん、捜査官の一人にお世話になってるって言ってたけど、誰なんだろう)
料理が出来たあとは皆を呼び、テーブルを囲んで食事を摂る。僕は食べれないけど。
全員揃った所で影嶺さんから聞いた話をしようかと思ったが、不知君が「そういやぁ、昼間にあった奴ら結局なんだったんだ」と先に聞いてくる。
佐々木琲世
佐々木琲世
今その話をしようと思ってた
不知吟士
不知吟士
お、タイミング良いな俺
聞いた話をありのまま全部話すと、瓜江君は予想はしていたが「はぁ?」とでも言うような表情を浮かべ、才子ちゃんは「ふぉおお!本当に異世界から!?」と、何故か目を輝かせていた。こういうの好きそうだなあ、才子ちゃん。
六月透
六月透
信じ難い話ではありますけど……でも、俺達現場見てますからね
不知吟士
不知吟士
流石に本当の話だと、俺も信じるぜ。思いっきし攻撃されて俺達も必死に避けてたしな。アレを嘘だとは思いたくない
米林才子
米林才子
下手したらあちしホワイトタイガーボーイに三等分にされてたしね
チラッと瓜江君の方を見ると、興味は無さそうだったが、意外にも「そうだな」と皆に同感してくれた。
佐々木琲世
佐々木琲世
その虎の異能者の子、敦君って言うんだけど頭下げて謝ってくれたんだ。虎の時とは違って、大分控えめで穏やかそうな子だったよ
不知吟士
不知吟士
そうなのか?んで、敵異能者が現れるかもしれないからその敦って奴をシャトーの一室に……って話だろ?俺は別に気にしないからいいぜ
六月透
六月透
話を聞いてる限り、居ないより居た方が俺もいいと思いますけど……CCGの方には、内緒なんですか?
佐々木琲世
佐々木琲世
そうなっちゃうのかなあー。んー、でも、泊まりみたいな感じだし、シャトーに泊まること自体悪い訳では無いから、バレても問題ないんじゃない?異能者がどうという話はまた別にして……だけど
米林才子
米林才子
才子も賛成ネ。異世界の話聞きたい!
佐々木琲世
佐々木琲世
そっちかー。瓜江君は……
佐々木琲世
佐々木琲世
(部外者反対派みたいな意見とかだったらどうしようか……)
瓜江久生
瓜江久生
(正体不明の敵異能者に仕事の邪魔されたくないし、使えるなら……)良いんじゃないんですか?俺達の仕事に着いてくる訳でもないですし
不知吟士
不知吟士
意外だなー。てっきり反対するかと思ってた
瓜江久生
瓜江久生
(むしろ、最低限の協力で早く元の世界に帰ってくれた方が良い)
別に……
不安な部分もあるが、話もまとまったので、僕は「じゃあもう夜だし、明日にでも影嶺さんに連絡するよ」と言って一人自室に戻る。
佐々木琲世
佐々木琲世
皆仲良くやれるといいな……
ふと、ベッドの上に置いてある服が視界に入り、僕はある事を思い出す。
佐々木琲世
佐々木琲世
(そういえば、僕があげた服……結局どうしたんだろう。有馬さん)
その時、ある予感が脳裏を過ぎる。
僕はまさか……と思いながらも、有馬さんとのやり取りを思い出す。
佐々木琲世
佐々木琲世
(増えた本の貸し借りに、僕の服をわざわざ貰いに来る……タケさんとの会話の内容……)
影嶺さんは捜査官の一人と言っていたし、心当たりがあるとすれば……有馬さんしかいない。
佐々木琲世
佐々木琲世
(有馬さんが……影嶺さんを?二人が知り合い?いや、でも……うーん……)
異世界から来た影嶺さんは、こっちの世界に帰る場所は無い。だとすれば当然服なんかの私物もほとんどないだろう。
僕の予感があたっているとすれば、服を持って居ない影嶺さんの為に、有馬さんが僕に服を貰いに来たとなるのだろうか。
影嶺さんは女の子にしては背も高かったし、見た目や口調は少年ぽいから、僕の服を着ていても違和感は無い。
佐々木琲世
佐々木琲世
(仮にそうだとして……影嶺さんが有馬さんから僕の話を聞いているのだとすれば、今日どんな風に僕見られてたかな……。そもそも有馬さんが僕のことどう伝えてるか分からないし)
これはあくまでも僕の勝手な憶測に過ぎない。機会があれば有馬さん本人に直接聞きたいが、“あの子よく食べるみたいだから料理作って”と頼まれた平子さんに聞くべきだろうか。影嶺さんに聞いた方が早いのだろうけど、僕の服の行方まで聞くのは流石に抵抗がある。これで違ってたら尚恥ずかしい。
佐々木琲世
佐々木琲世
(もうちょっと考えてみよう……)

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