第20話

誰かにとっての悪
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2021/02/17 21:32
「威吹さん」と名前を呼ぶ声が聞こえて目を覚ます。昨日、異能を使った影響なのか胸焼けがする。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
……おやすみ
中島敦
中島敦
二度寝しようとしないで下さい!
僕は自室のベッドで寝ているが、敦君はリビングにあるソファーで寝ていた。
まさか宿敵である武装探偵社の社員と寝泊まりする羽目になるとは……。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
はぁー……敦君、とても疲れたし、やる気が出ないのだけれど
中島敦
中島敦
休みたい気持ちは分かりますけど!
携帯に手を伸ばすと、メールが来ているのに気付く。誰からのメールなのかは予想はしている。確認すると、案の定ハイセ君からだった。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
……ハイセ君からメールだ。シャトーに君を置いてもいいってさ
中島敦
中島敦
ほ、本当ですか!?でも緊張するなぁ。
仕方なくで受け入れられたらどうしよう……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
仲良く出来るよう頑張れ。ハイセ君には返信しておくよ。彼等は仕事だろうし、シャトーに行くとすれば夜かな。それまではカケラ探しだ
タケさんが作り置きしてくれたカレーを朝食に、集めた情報を敦君にも提供してある程度探す範囲を定める。二手に分かれて探したい所だが、敦君は携帯もなければ道も分からない。なので、暫くは二人で行動することにした。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
僕は極力異能を使いたくないから、喰種に襲われたら敦君頼んだよ
中島敦
中島敦
は、はい……
食べ終わった後は出掛ける準備を済ませ、外に出る。歩いている最中、敦君が喰種について聞いてくる。
中島敦
中島敦
異空間に閉じ込められた時に初めて喰種を見ましたけど……あの人達は普段人の中に紛れて生活してるんですか?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そうだね。中には、ありのままの姿で生活して捜査官から目を付けられる者もいるが
中島敦
中島敦
佐々木さんの説明によれば、喰種は人を喰らい種を喰らう者って言ってましたけど……共食いってことですか?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
そうなるね。言っておくが、ハイセ君は一応半喰種だ
中島敦
中島敦
え!?そうなんですか!
喰種知識の一つとして、半喰種や赫者、クインクス等の説明を簡単に敦君に話す。
異能が効果的に効く相手、効かない相手も中には居るだろう。僕の異能はまた別だが。
中島敦
中島敦
人や同種しか食べれなくて、仕方なく殺す……。何だか、生きづらいですね。
喰種ってだけで捜査官にも狙われるみたいだし……。人にも喰種にも“善人”や“悪人”は居るはずなのに、一方的に駆逐されるなんて。
だからといって殺人を正当化するつもりはありませんが
影嶺 威吹
影嶺 威吹
……君なら言うと思った。
僕達が喰種に対してあまり偏見を持たないのは、僕達が喰種が存在しない異世界から来たからでもある。だけど、こっちの世界の人間からすれば、互いの存在に恨みを抱き、復讐に燃えているものも少なくない。特に捜査官とかはそういった人間の集まりでもある。
喰種を庇う発言は良しとはされないだろう。場合によっては死刑になるほど、喰種を庇う行為も重罪だしね。こっちの世界は
中島敦
中島敦
そんな……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
だとしてもだ。君の意見をわざわざ変える必要は無い。ただ、こっちの世界ではそう言う人がいるのを知って欲しかった。それに、異世界に来た僕達だからこそ、先入観を持たずに見えるものがある。自分が正しいと思ったことを成せばいい。例えそれが、誰かにとっての“悪”だったとしてもね
中島敦
中島敦
誰かにとっての“悪”だとしても……

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