現場へ向かうと、通報通り二体の喰種が中性的な顔立ちをした若者を一人襲っていた。
若者は何とか逃げ切っているみたいだが、向かっている先は行き止まり。
早速瓜江君達に指示を出す。才子ちゃんと六月君には若者の方へ向かってもらい、瓜江君と不知君の援護をしながら僕達は喰種二体を倒す。
喰種を倒した後、六月君と才子ちゃんに保護された若者の傍に寄って、声を掛けた。
若者は丸眼鏡の奥から黄色い瞳を覗かせ、控えめ且つ落ち着いた様子で「大丈夫です。助けて頂き、有難うございました」とお礼を言ってくる。
不知君がこちらに歩きながら言うと、「死ななかっただけ運が良かった」と瓜江君が小さく呟いた。
でも確かに、不知君が言ったように二体の喰種に襲われて、僕達が着くまでよく逃げ切ったものだ。僕達が今居る場所は、CCGの建物から多少離れていた上、通報が来て現場に向かうまでの時間を考えれば、その間に殺られていても可笑しくない。
匂いからして“人間”なのには間違いないが……考え過ぎだろうか。その場で若者に軽く事情聴取し、名前も教えてもらった。
影嶺さんは頭を下げると、何事も無かったかのように背中を向けて平然と帰り始めた。
六月君や才子ちゃん、不知君達が話をしていると、CCGに居る捜査官と連絡を取りあっていた瓜江君が「今から喰種の死体を回収しに来るそうです」と、伝えてくる。
僕が返答すると、微かに「佐々木琲世、か」と誰かに名前を呼ばれた気がしたが、周りを見ても名前を呼んだらしき人物は見当たらなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。