第11話

喰種対策局へ ハイセside
1,003
2021/02/15 14:06
佐々木琲世
佐々木琲世
手を、貸す?君は、あの虎が何か知ってるの?

影嶺さんは無言でニコッと笑い、不知君が「もしかして、通報したのお前か!?」と聞くが、影嶺さんは「其れは違う。誰が通報したかは知らない。僕はたまたま君達が人喰い虎の話をしてたのを耳にして来ただけだ」と答えた。
瓜江久生
瓜江久生
さっき、あの虎を“人間”と言ったな?どう言うことだ
次に瓜江君が聞くと、影嶺さんは「見てれば分かるさ」とだけ言って虎を見た。その直後、虎は影嶺さんに襲い掛かり、僕が助けに行こうとするが━━━━━━━━━━━━━
影嶺 威吹
影嶺 威吹
助けは不要だ。佐々木琲世君

名前を呼ばれ、「僕を、知っているのか?」と思わず動きを止める。影嶺さんは人並みにしては予想以上の身体能力で虎の攻撃を回避する。
しかも、両手はポケットの中に入れたまま、宙に浮くかのように、高く跳んで虎の背後に立つ。
米林才子
米林才子
な、何もんじゃあやつ!
六月透
六月透
足だけ使って軽々と避けてる……?
瓜江久生
瓜江久生
喰種では無さそうだが、捜査官でも無さそうだな
影嶺さんの動きに圧倒されていると、影嶺さんは虎に対して話し始めた。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
全く……君はまた“区の災害指定猛獣”に逆戻りしたいのかい?手間のかかる虎君だねぇ
佐々木琲世
佐々木琲世
(区の災害指定猛獣?)
不知吟士
不知吟士
てか、影嶺つったか?何者か知らねーけど、お前手ぶらでどうやって闘う気だよ!せめて武器になるものを……!
影嶺 威吹
影嶺 威吹
武器なんて僕には必要ないさ
影嶺さんはそうは言うが、壁にかかとをつけ、虎に追い込まれる。両サイドには積荷が高く重なっていて、少なくとも普通の人間なら逃げられない。だが、影嶺さんは「おや、行き止まり?」と呟く割に、余裕そうな表情を浮かべていた。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
さて……虎に喰われる最後も悪くないが……残念だ
追い込まれて身動き出来なくなった影嶺さんに虎が飛び掛かろうとし、不知君達が咄嗟に「おい!」とクインケを構えるが、影嶺さんは不敵な笑みを見せ、右手を軽く上げた。
右手の人差し指は丁度飛び掛った虎の額に当てられ、次の瞬間━━━━━━━━━
影嶺 威吹
影嶺 威吹
君では僕を殺せない。異能力──────────“無知の宙”
影嶺さんの言葉と共に、人差し指から謎の光が虎を囲むようにして現れ、虎が僕達の真上に吹っ飛ばされた。虎の身体もが光り出すと、虎は見る見るうちに人間の青年へと姿を変える。
青年は意識を失ったまま地面へと落ちた。
米林才子
米林才子
な、ななな!本当に人間!?
僕が振り返ると、影嶺さんは左手をポケットに入れたまま笑顔でこちらへ歩く。
佐々木琲世
佐々木琲世
君は……君達は一体……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
流石に驚いたって顔だ。その前に……“敦君”
僕達の間を歩き、影嶺さんは倒れている青年の前に立つ。青年は恐る恐る目を開け、上半身を起こすと、影嶺さんの顔を見るや否や「う、うわああああ!?」と驚いた表情で座ったまま後ずさる。
中島敦
中島敦
な、なななな何で貴方が……!?
影嶺 威吹
影嶺 威吹
落ち着け少年
中島敦
中島敦
ぼ、僕……な、何を……
青年はボロボロになったガレージ内を見回すと、何かを察したのか、顔を青ざめた。
中島敦
中島敦
ま、まさか、“虎が僕を追いかけて”……?
いや、違う……“虎は僕”で……なら、僕の“異能”が暴走して……?僕、また、誰かを傷付けたんじゃ……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
……どうやら、異世界に来た際の衝撃なのか記憶が混乱しているみたいだね。君、本来なら自分の異能を制御出来ないみたいだし
中島敦
中島敦
これじゃあ、僕はまた皆に迷惑をかけて……一人でいないと……
僕達が話についていけず呆然と二人のやり取りを眺めていると、青年はパニック状態並に取り乱し始め、影嶺さんが「“敦”」と、低くハッキリ青年の名を呼んだ。
影嶺 威吹
影嶺 威吹
誰も傷ついていないし、“お前”は武装探偵社員だろう。福沢社長の元についたのなら社長の異能でお前の異能も制御可能になった筈だ。
これ以上取り乱して、自身の精神状態を自ら悪化させるな。制御出来なかった以前の自分に囚われ、余計に異能が使えなくなるぞ
中島敦
中島敦
っ……!
影嶺 威吹
影嶺 威吹
誰も傷付けたくないのなら……自分は“異能を制御出来る”。今は其れだけ考えろ。分かったね?“敦君”
中島敦
中島敦
は……はい……すみません。有難う、ございます。少し、落ち着きました
敦と呼ばれた青年は、落ち着きを取り戻すと、片手に何かを握って居るのに気付いて手を開いた。掌にはひし形で透き通った透明色の小さなカケラが乗っていた。
中島敦
中島敦
これは……
影嶺 威吹
影嶺 威吹
“君と君の異能が封印されていたカケラ”だ。僕が預かっておこう。詳しい話は後々……
影嶺さんは振り返ると、僕達を見て「すまなかったね。怪我は無かったかい?」と先程の笑顔を見せた。
瓜江久生
瓜江久生
異能とか異世界とか言ってたが……お前達は何者だ?
不知吟士
不知吟士
武装ナンタラとも言ってたな
影嶺 威吹
影嶺 威吹
喰種捜査官の君達が知ってどうする気だい?
佐々木琲世
佐々木琲世
……確かに僕達は喰種捜査官だけど、君達が例え喰種じゃなかったとしても、この状況を目にしたからには見逃す訳には行かない。
せめて、話だけでも聞かせて欲しい。もしもまた、同じことが起きた時の為にも情報は多い方がいい。それとも、僕達には教えられない話なのかな。それに、君が僕の名前を知っていたのも気になる。ここで立ち話をするのもなんだし、CCGまで一緒に来てくれないかな
影嶺 威吹
影嶺 威吹
ふふ。そう来なくちゃ。良いよ。では行こうか敦君
中島敦
中島敦
は、はい
影嶺さんと敦君は僕達と一緒に喰種対策局まで行ってくれるみたいだが、影嶺さんはまるで僕が彼等を引き止めると分かっていたような口振りだった。まあ、あんな光景を見せられて、逆にここで引き止めないのもどうかとは思うが。

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