あれから3年。月日は流れて、私達は家族になった。3人になる日も、そう遠くはない。だけど、あの時のことを、忘れることは出来なかった。
今でも、時々考える。この選択で間違ってなかったか。確かに今は幸せで、不満なんかないけど、心の隅に、おおらかで策士な彼の顔が浮かぶ。思い返せば、彼の顔は明るくも悲しげで、心を殺してた。全て、私のために。
約束されたレールに乗る前に、やりたかったことなのか、本気の想いだったのか。今となっては遠くなった彼に聞く術はないけど、もし、後者であったなら、彼の心中は計り知れない痛みで溢れかえっていただろう。
電光掲示板に映る、大人になった懐かしい顔。レールの終着点に着いた彼は、もう遠い人。スーツの似合う、やり手社長に成長していた。
愛を教えてくれた彼を、私はきっと、死ぬまで忘れないだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!