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第10話

♯10
691
2019/05/11 13:28
 あれから3年。月日は流れて、私達は家族になった。3人になる日も、そう遠くはない。だけど、あの時のことを、忘れることは出来なかった。

今でも、時々考える。この選択で間違ってなかったか。確かに今は幸せで、不満なんかないけど、心の隅に、おおらかで策士な彼の顔が浮かぶ。思い返せば、彼の顔は明るくも悲しげで、心を殺してた。全て、私のために。

約束されたレールに乗る前に、やりたかったことなのか、本気の想いだったのか。今となっては遠くなった彼に聞く術はないけど、もし、後者であったなら、彼の心中は計り知れない痛みで溢れかえっていただろう。

電光掲示板に映る、大人になった懐かしい顔。レールの終着点に着いた彼は、もう遠い人。スーツの似合う、やり手社長に成長していた。

愛を教えてくれた彼を、私はきっと、死ぬまで忘れないだろう。

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