第8話

#8
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2019/05/04 23:52
 月曜日がやってきた。クラスメイトと挨拶を交わし、自席に着く。隣に座るウォヌは少し不機嫌で。

「ウォヌ、おはよ」

『おう。』

ね?不機嫌でしょ?いつもはなんか言ってくるのに、今日はこれだけで少しさみしい。

ぎこちない空気が流れて、あっという間にお昼になった。

『お前今日、昼何?』

授業終わりのチャイムと同時にウォヌの口が開いた。

「パン買うけど…なんで?」

『ちょっとついてこい』

ぐいっと腕を引っ張られ、購買に行き、パンを買われ、空き教室に連れて行かれた。

「ちょっ、ちょっと!痛いよ、離して?」

ジュンくんと遊んだことにきっと腹を立ててる。子供かって。

『ん』

彼が買ったパンが投げられて、すかさずキャッチする。カレーパンとクリームパンだ。私の好きなパンたち。近くの机に腰掛けて、食べることにした。彼は依然として何も言わない。

2つ目を食べ終わる頃、彼の口が開いた。

『日曜、楽しかった?』

「…うん、楽しかったよ。久々だったしね」

確かに楽しかった。間違いないけど、ジュンくんには申し訳なくて。

『そうか。…俺さ、こないだも言った気するけど、あいつとお前が一緒にいんの、嫌なんだよ。だから、行って欲しくなかった。』

「うん。」

それは何となく、気づいてたよ。

「このまえ、あんたの部屋に行った時言われたじゃん。日曜、正直あんたのことしか頭になくて、ジュンくんに言われちゃって。」

私もあんたに言いたいこと、沢山あんのよ。

ぐちゃぐちゃの頭をそのまま吐き出して、ウォヌは分かったかな。辛いこの気持ちを知って欲しかった。あんたの気持ちを私が知ったみたいに。

『うん。』

私の言葉の速さに合わせて、ゆっくり聞く彼に、本当の思いを打ち明けた。

「それで、気づいて。わたし、ジュンくんを好きになりたいの。あんな人、私には勿体ないけど、すごく大切にしたいの。だから私にもう変なこと言わないで」

言い終わるのと同時に、予鈴のチャイムがなった。

『おれ、先戻ってるわ』

静かにドアを引き、彼が出ていく。その背中が、悲しくも愛おしくて。こんな感情は初めてだ。ジュンくんを好きになりたいのに、ウォヌが瞼の裏から離れない。あいつの声とか匂いとか、嫌になるほどこびりついていて。


「なんなのよ」


混沌とした頭ではこんな言葉しか出てこなかった。

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